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亜麻花の天色ポリフェノールTM

 
ふるさと元気プロジェクト
色あせず老化しない亜麻花のポリフェノールを原料化
オートファジー活性化により肌細胞を再生

 亜麻花あまはな天色あまいろポリフェノールTM2022.01.06

✔ 人類最古の有用植物、亜麻の栽培が北海道で復活
✔ 美しい亜麻の花から、色あせずしおれない花ならではの美肌成分を発見*
✔ “天色ポリフェノール”が真皮細胞のオートファジーを活性化
✔ 肌細胞を再生することでシワ・たるみ改善が期待

  ※天色(あまいろ)とは晴天の澄んだ空のような鮮やかな青色のこと
  *亜麻の花において(当社調べ)

  目 次

  • 1. 期待される効果と有効性情報

  • 2. 亜麻というすごい植物

  • 3. 亜麻花の青色(天色あまいろ)の秘密

  • 4. 亜麻花の天色ポリフェノールが肌細胞のオートファジーを活性化

  • 5. 抗老化作用

  • 6. 表皮細胞への効果

  • 7. シミ・くすみ改善

  • 8. 抗酸化作用

  • 9. 亜麻の花の生存戦略

  • 10. 原料情報

  •  


    1. 期待される効果と有効性情報

    期待される効果

    シワ 保湿 シミ・くすみ

    有効性情報

    ■シワ
    オートファジー活性化(真皮線維芽細胞)
    細胞賦活(真皮線維芽細胞増殖促進)
    コラーゲン産生(真皮コラーゲン量)
    ヒアルロン酸産生(真皮ヒアルロン酸量)
    ヒアルロン酸産生(HAS1,2生成促進)
    ヒアルロン酸保護(HYAL1生成抑制)

    ■保湿
    細胞賦活(表皮角化細胞増殖促進)
    セラミド産生(GBA生成促進)
    セラミド産生(SMPD生成促進)
    表皮ヒアルロン酸産生(HAS3生成促進)
    NMF産生(FLG生成促進)
    コーニファイドエンベロープ成熟(TGM生成促進)

    ■シミ・くすみ
    メラニン貯留抑制(PAR2生成抑制)
    メラニン産生抑制(TYR生成抑制)
    メラニン産生抑制(MC1R生成抑制)

    ■活性酸素消去
    抗酸化(O2-ラジカル)
    抗酸化(過酸化脂質)
    抗酸化(DPPHラジカル)
    抗酸化(OHラジカル)


    2. 亜麻というすごい植物

    2.1 人類最古の有用植物

    ◆亜麻(アマ、Flax、学名:Linum usitatissimum)
    日本では江戸時代に種を薬として使うために限られた範囲で栽培され、明治から昭和初期にかけては繊維用として北海道で広く生産されていました。亜麻の茎は自然界で最も強靭な繊維をもつとされ、そこから作られるリネンは衣類製品などとなります。種子である亜麻仁からは亜麻仁油(あまにゆ)が採れ、食用や塗料、油彩に用いられます。亜麻仁油(linseed oil / flaxseed oil)はαリノレン酸(オメガ3系の必須脂肪酸)が豊富な健康オイルとして大変注目されています。

    ◆人類最古の有用植物
    グルジア(ジョージア)の洞窟から3万4000年前の世界最古の繊維が発見されました(Science, 2009)。これが亜麻繊維です。先史時代の人類が亜麻繊維の糸から衣服やロープを作ったと考えられ、人類による使用が確認された繊維としては最も古いとされます。論文では、「最終氷期の寒さをしのぐための衣服や布のための糸を作っていたのだろう。古代の狩猟民たちはこうしたことで移動が容易になり、生存の可能性が高まっていったのかもしれない」との記載。

    紀元前8000年には肥沃な三角地帯で野生の亜麻が、紀元前7000年には同地域で最初の穀物として栽培が確立。その後、メソポタミア、エジプト文明においてリネンは広く繊維として利用。紀元前1400年にはエジプトで亜麻仁油が使用、ヨルダンやスイスで食用穀物として利用。

    リネンはミイラの布に、亜麻仁油はミイラの防腐処理にも使われていたことは有名です。「聖骸布」もリネンだったといわれています。リネンは現在でもエシカルでエコナな繊維として、衣類はもちろん、アメリカのドル紙幣にも使われているそうです。

    (参照:Canadian Food Inspection Agency, Applicants Directive 94-08, The Biology of Linum usitatissimum L. (Flax))

    ※アサとは:狭義には、アサ科の一年草である大麻草(Cannabis sativa L.)の別称。広義には、リネン(亜麻)、ラミー(苧麻)、ヘンプ(大麻)、ジュート(黄麻)、マニラ麻(アバカ)、サイザル麻(ヘネケン)などの植物繊維の総称。
     


    2.2 北海道で亜麻が復活

     
    亜麻は北海道の冷涼な気候に適し、戦争需要によっても栽培が普及しましたが、その後の化学繊維の登場により徐々に生産は途絶えます。一方、2000年から北海道での栽培が復活し、当別町を起点として現在では十勝や上川でも栽培が広がっています。北海道の特用植物として再び注目されています。2020年の北海道の亜麻畑は10~20haほどと推定されます。本原料開発は、コタニアグリならびに十勝農工房の皆様の全面協力を得て実現しました。

    十勝では亜麻は7月上旬に花を咲かせます。広大な十勝の亜麻畑で咲き誇る青花は、晴天時にはまさに天(空)に溶け込むがごとく、圧倒的な美しさです。
     

    北海道十勝は亜麻の栽培適地
     ● 冷涼な気候で育つ一年草
     ● 農薬いらずな植物で大規模機械化された北海道農業に最適
     ● 北海道の輪作体系に適合
     ● 青く儚い花の見頃は1週間


    2.3 亜麻の部位別の特徴

    ◆亜麻の種子(亜麻仁/Flaxseed/Linseed)
    油に豊富に含まれるαリノレン酸は融点が-11℃(リノール酸は-5℃)。種子に含まれる油は発芽のためのエネルギー源であり、αリノレン酸であれば寒冷地でも凝固してしまうことはありません。

    またαリノレン酸はω3系の必須脂肪酸としても注目され、亜麻仁リグナンと共に多くの健康機能性が明らかにされています(*)。

    * Linseed essential oil – Source of lipids as active ingredients for pharmaceuticals and nutraceuticals
     JR Campos et al. Curr Med Chem. 26 (2019)

    ◆亜麻の茎
    厳しい風雨にも耐えうる強固な多角・中空構造のセルロースをもち、植物界最強の繊維ともいわれています。一方、油糧種子の生産においては茎は副産物として大量に発生し、有効活用法も研究されています。

    亜麻の茎にはC-グリコシルフラボノイドが豊富に含まれており、がん細胞に対してアポトーシス誘導することが報告されています(*)。これらのフラボノイドは構造的に安定なことから、藁にも含まれていることが分かっています。

    * Flavonoid C-glucosides derived from flax straw extracts reduce human breast cancer cell growth in vitro and induce apoptosis
     M Czemplik et al. Front Pharmacol. 7 (2016)

    ◆亜麻の葉
    霜でも枯れない強い耐寒性や耐病性をもちます。そのため亜麻は北海道の冷涼で広大な大地でエコな栽培が実践されています。この性質には、亜麻に豊富に含まれるオリエンチンなどのC-グリコシルフラボノイドが関与しているともいわれています(*)。

    * Phenolic profiling of flax highlights contrasting patterns in winter and spring varieties
     J Tchoumtchoua et al. Molecules. 24 (2019)

    ◆亜麻の花(本原料の素材)
    農作物の花としては珍しい青い花を一斉に咲かせます。十勝の広大な畑で青い花が満開となる様は圧巻です。早朝開花して昼には散ってしまうといわれる特性から、美しくも儚い花として亜麻畑は観光スポットにもなっています。これは花弁脱離型植物の特徴であり、萎縮(老化)前に花を脱離するという亜麻の花の特徴の一つです。

     亜麻はC-グリコシルフラボノイドが初めて発見された植物として、ポリフェノール研究の長い歴史をもちます(*)。一方、人類との悠久の歴史をもつ亜麻においても、儚く散りゆく花については有効性情報は世界的にもほとんど見当たりません。そこで亜麻の花を美容素材として活用するために、我々は特にポリフェノール成分に着目して研究を進めてきました。

    * The C-glycosylflavonoids of flax, Linum usitatissimum
     J Dubois T J Mabry. Phytochemistry. 10 2839–40 (1971)

     

    3. 亜麻花の青色(天色あまいろ)の秘密

    3.1 花には特別なポリフェノールが存在

    亜麻の花に含まれるポリフェノール成分を分析したところ、葉で報告されているのと同様に(*2)、フラボノイドC配糖体であるオリエンチンやビテキシンが花にも豊富に含まれていました(下図)。

    フラボノイドC-配糖体は、フラボン骨格に対して糖がC-C結合したもので、O-配糖体と比較すると結合が化学的に安定という特徴をもちます。

    今回我々は、葉での存在が最近確認されたフラボノイドC配糖体の一つが(*)、花に特異的に多く含まれることを発見しました。これは、葉に対して実に314倍もの含有量でした。※アントシアニン類ではありません。

    * Phenolic profiling of flax highlights contrasting patterns in winter and spring varieties
     J Tchoumtchoua et al. Molecules 24 (2019)


    3.2 亜麻の天色を作り出すためのポリフェノール

    青いバラは自然には存在しないことから、ブルーローズは「ありえないもの」の代名詞となっています。カーネーションやキクでも青色の花は咲きません。

    一方、亜麻のように花を青くすることのできる植物がいくつか存在します。青色はミツバチなどが好む色で、植物の生存競争において有利な色ですが(以下参照1)、花を青くするというのは、実は植物にとって大変な作業です。

    花が青くなるためには多くの因子が複雑に関係し、それこそ花によって色々あります(以下参照2)。その青色因子の一つに特別なポリフェノール成分(コピグメント)を作り出すというものがあり、亜麻の花にはまさにそのポリフェノールを作り出す高い能力が備わっていることが分かりました。数ある青色因子のなかでも、ポリフェノール成分(コピグメント因子)であれば抽出して有効成分として活用することも可能です。
    ※青色の花をもつ当社原料のヤグルマギクと比較しても48倍と飛びぬけています(コピグメント成分量として)。

    このように、亜麻の花に特別多く含まれるポリフェノール成分は花の天色(青色)因子であることから(*1)、これを「天色ポリフェノール」と名付けました。※アントシアニン類ではありません。

    天色(あまいろ)とは、晴天の澄んだ空のような鮮やかな青色のこと(R:101,G:187,B:233, #65bbe9)
    亜麻色(あまいろ)とは、黄色がかった薄茶色のこと(R:214,G:198,B:175, #d6c6af)

    <参照>
    1)青色の意味
    植物にとって鮮やかな青色を作り出すのは容易なことではありません。一部の植物が青い花を作り出す理由としては、ポリネーター(虫などの花粉媒介者)を強く引き寄せることにあります。亜麻は花弁が青いだけでなく、珍しいことに雄蕊(葯)までも青いです。蜂の巣箱は青色が多い、日本の各種アブが青色に集まる実験などからも、虫は青色を強く認識することが知られています。蝶でも同様です。青花は空と同化して分かりにくいという説もありますが、科学的には青花の誘引性は証明されているようです(*2)。

    2)青色形成
    青色色素の本体はアントシアニン色素の一種のデルフィニジンで、この成分を作ることができなければ基本的に花は青くなりません。しかし、花が鮮やかな青色を発現するためには、単にデルフィニジンが存在しているだけでなく、色素を安定化させるための複数の要素が必要です。その一つが、コピグメントと言われる特別なフラボノイドを作り出すつ力です。コピグメントの存在だけでなく、花弁の中がアルカリ性であったり、有機酸や金属イオンと結合していたり、複雑な高分子構造を形成していたり、などと複合的な条件が必要となります。青色因子のなかでも、機能性素材として活用するには、特定のコピグメント成分以外は現実的に困難です。

    *1:Contribution to flower colors of flavonoids including anthocyanins: A Review
      T Iwashina. Nat Prod Commun. 10 (2015)
    *2:Plant scents modify innate colour preference in foraging swallowtail butterflies
      M Yoshida et al. Biol Lett. 11 (2015)

    巣箱にはミツバチの好きな青色が多い          亜麻の天色の花に引き寄せられるミツバチ


    3.3 天色ポリフェノールは細胞の老化を抑制?

    亜麻は花弁脱離型の植物で、その花は採取後(植物から脱離後)も萎れにくく、美しい天色を維持し続けます。一般に花弁の萎れは、花弁細胞の老化によるものです。老化症状の見られない亜麻の花では、大量に含まれる天色ポリフェノールが、青色色素の安定化だけでなく、細胞の安定化(老化抑制)にも寄与している可能性が考えられます。

    ※花弁はポリネーターを誘引するために発達した器官であり、その役割を終えると不要になるため他の器官よりも老化は早く進みます。離層形成による花弁脱離自体も花の老化の一つです。脱離型花弁(サクラなど)では、クロマチン凝縮や核断片化で示されるプログラム細胞死は生じないことも報告されています。

    亜麻の花畑          散った花      数日経過した花弁        乾燥後も色鮮やかな花弁

    ✔ 亜麻の花には天色になるための特別な天色ポリフェノールが高含有
    ✔ 天色ポリフェノールは花の細胞の老化抑制に寄与?
      ⇒ 亜麻花の力に着目した化粧品原料を開発

     


    4. 亜麻花の天色ポリフェノールが肌細胞のオートファジーを活性化

    4.1 天色ポリフェノールはオートファジー活性化因子

    <図の説明>
    脳機能研究において、実は天色ポリフェノールには、AMPKを活性化して脳機能を改善する効果があることが報告されています(※)。

    細胞のエネルギーセンサーであるAMPKの活性化は、オートファジーの活性化に直接つながります。またAMPKは、長寿遺伝子として知られるSIRT1を活性化することも知られています(*1)。

    AMPK活性化は、オートファジー抑制因子であるmTOR活性化を抑制することで、オートファジーの低下を抑制します。紫外線や活性酸素は、皮膚のmTOR(老化シグナル”エムトア”)を活性化して、オートファジーの低下と老化促進を引き起こしてしまうことが知られています(*2)。

    ※ 天色ポリフェノールはアデノシンA1受容体アンタゴニスト(刺激抑制剤)です(*3)。アデノシンA1受容体を介したアデニルシクラーゼ阻害を抑制することで、cAMP産生を増大させ、AMPKが活性化されます。

    AMPK: AMP-activated protein kinase
    mTOR: mammalian target of rapamycin

     

    ✔ 皮膚細胞のエネルギーセンサー(AMPK)を活性化することでオートファジーを活性化
    ✔ 活性酸素が誘発する老化シグナル(mTOR)を抑制することでオートファジー低下を抑制
     ⇒ 天色ポリフェノールであれば肌細胞のオートファジーを活性化して肌老化抑制?


    *1: AMPK regulates energy expenditure by modulating NAD+ metabolism and SIRT1 activity
      C Cantó et al. Nature. 458 1056-60 (2009)
    *2: The role of AKT/mTOR pathway in stress response to UV-irradiation: Implication in skin carcinogenesis by regulation of apoptosis, autophagy and senescence
      E Strozyk and D Kulms. Int J Mol Sci. 14 15260-85 (2013)
    *3: Swertisin, a C-glucosylflavone, ameliorates scopolamine-induced memory impairment in mice with its adenosine A1 receptor antagonistic property
      H E Lee et al. Behav Brain Res. (2016)

     


    4.2 オートファジーを活性化することで肌老化を防ぐ

    ◆オートファジーとは

    ①細胞の新陳代謝
    オートファジー(自食作用)は、細胞が自己成分を分解・リサイクルする機能のことです。

    <下図>
    細胞の中の不要になったタンパク質や細胞小器官などを、「隔離膜」が包み込み、「オートファゴソーム」という小胞を形成します。その後オートファゴソームはリソソームと融合し、取り込まれた不要なタンパク質やオートファゴソームの内膜は、リソソームに含まれる酵素によって分解されます。分解されてできたアミノ酸は、タンパク質の合成に再利用されます。

    すなわちオートファジーは、細胞成分を常に新しい状態に保つ「細胞の恒常性を維持するシステム」です。

    ②細胞内浄化
    不良化した細胞小器官を除去することで、細胞を健全に保つ役割があります。たとえば不良ミトコンドリアはROSの発生源となり様々な疾病の原因になりますが、これを隔離・分解します(マイトファジー)。また外部から侵入した病原性細菌やウイルスなどを隔離・分解することで細胞を守ります。

    ◆オートファジー活性の低下が肌の老化に

    オートファジーは加齢によって低下することが知られています。オートファジーの低下はコラーゲンなどの真皮細胞外マトリクスの産生低下を引き起こすことが分かっています(*1)。またシミ部位においても、皮膚のオートファジー活性の低下により、メラノソームの分解が抑制されていることが知られています(*2)。

    オートファジーの低下は、老化に伴うさまざまな疾患にも深く関わっていると考えられています。オートファジーを活性化することで、老化やそれに伴う病気の発症を抑制することが期待されています。

    ※2016年、東京工業大学栄誉教授の大隅良典氏が、オートファジーの仕組みを分子レベルで解明したとして、ノーベル生理学・医学賞を受賞しています。

    *1: Age-related disruption of autophagy in dermal fibroblasts modulates extracellular matrix components
     K Tashiro et al. Biochem Biophys Res Commun. 443 (2014)
    *2: Autophagy has a significant role in determining skin color by regulating melanosome degradation in keratinocytes
     D Murase et al. J Invest Dermatol. 133 2416-2424 (2013)


    4.3 天色ポリフェノールは真皮線維芽細胞のオートファジーを活性化

    天色ポリフェノールのオートファジー活性化作用をオートファゴソーム形成を指標として評価しました。低分子蛍光物質のDAPGreenは、形成過程のオートファゴソームに導入され二重膜の疎水環境に応答して蛍光発光します。そのため、本色素はオートファゴソームとオートリソソームを検出します。なお、オートファジーマーカーのLC3と高い相関性のある検出法です(DOJINDOマニュアルより)。

    <試験方法>
    真皮線維芽細胞を24時間培養。その後HBSS(+)で希釈したDAPGreenとエキス(天色ポリフェノール)を添加し、蛍光画像撮影およびプレートリーダーで蛍光強度測定(Ex485nm / Em535nm)。試験濃度: 9, 18(画像データ), 35 μg/mL *P<0.05, **P<0.01

     
    真皮線維芽細胞の通常栄養培養条件(画像左)に対し、栄養飢餓ストレス条件(画像中央)では緑色に発色するオートファジー活性の上昇が見られます。この飢餓ストレス下の細胞に天色ポリフェノールを添加すると、オートファジー活性がさらに上昇する(緑色発光が強くなる)ことが示されました。

    環境ストレスに応答してオートファジー活性が上昇し細胞が保護されますが、そのオートファジー活性を薬理学的に上昇させることで、細胞生存率がさらに上昇することが報告されています(*)。

    * Association of androgenetic alopecia with smoking and its prevalence among Asian men: A community-based survey
     LH Su et al. Arch Dermatol. 143 (2007)

     

    天色ポリフェノールを飢餓ストレス下の真皮線維芽細胞へ添加すると、有意にオートファジーレベルが上昇しました(左図)。また、最も高いオートファジーレベルを示した濃度では、飢餓ストレスにより低下した細胞増殖率が回復(12%)しました(右図)。この結果は、飢餓ストレスという細胞の生命が危ぶまれる状況において、誘導性オートファジーが細胞に栄養を供給し、細胞の再生力を高めたものと推測されます。

    各濃度のオートファジーレベル:(112%、119%、116%)

    飢餓ストレス(カロリー制限)はオートファジーの最も生理的な誘導因子です。一方、加齢に伴う細胞の老化により、飢餓も含めた新たなストレスに対して適切な応答ができなくなってしまいます。皮膚が健全な代謝や分化を維持していくためには、様々なストレスに対してもオートファジーが誘導されて細胞の恒常性が維持されることが重要です。オートファジーの作用が皮膚の恒常性維持に、オートファジーの欠陥が皮膚の老化に関連しています。

    オートファジーによる皮膚の老化抑制(*):
     ● ケラチノサイトの角化過程では恒常的に活性であり、環境ストレスに対する耐性を高めている
     ● 真皮細胞外マトリックス(ECM)を維持し、老化症状を抑制する
     ● 加齢に伴う色素リポフスチンの沈着を防ぐ
     ● タンパク質恒常性を維持し、酸化タンパク質の蓄積を防ぐ

    ※時間的老化や紫外線曝露により老化した皮膚細胞におけるオートファジー障害は、これらすべてを負に誘導。

    * Autophagic control of skin aging
     L Eckhart et al. Front Cell Dev Biol. 30 (2019)  


    5. 天色ポリフェノールの抗老化作用

    <試験方法>
    真皮線維芽細胞を24時間培養。その後、天色ポリフェノール含有EMEMを加え24時間培養。その後、RNA抽出よびcDNA合成。cDNAを用いてRT-qPCR
    試験濃度: 0.35, 1.1 μg/mL *P<0.05

     

    <結果と考察>
    真皮線維芽細胞に天色ポリフェノールを添加して培養することにより、細胞増殖が促進され、コラーゲン産生とヒアルロン酸産生が促進されることが分かりました。これはオートファジーによる真皮線維芽細胞の再活性化により、線維芽細胞のECM産生が活性化されたためと考えられます。
     

    <遺伝子の特徴>
    HAS1,2(Hyaluronan synthase: ヒアルロン酸合成酵素)
    真皮でのヒアルロン酸合成を担う酵素。真皮に存在する線維芽細胞に発現し、高分子のヒアルロン酸を作り出します。HAS2はHAS1よりも高分子のヒアルロン酸を産生します。ヒアルロン酸は肌の水分保持に関与し、肌にハリを与えてシワを防ぎます。
    HYAL1(Hyaluronidase-1: ヒアルロニダーゼ-1 )
    肌の水分保持に重要であるヒアルロン酸を分解する酵素。炎症によって真皮線維芽細胞で増加し、シワやたるみの原因となります。

    <結果と考察>
    天色ポリフェノールはHAS1とHAS2の遺伝子発現を促進し、HYAL1の発現を抑制しました。このことから天色ポリフェノールには、肌の水分を保持して肌にハリを与えるヒアルロン酸の産生を促進し、同時にヒアルロン酸を分解から保護する効果が期待できます。

    発現率:HAS1 (174%, 291%), HAS2 (116%, 131%), HYAL1 (72%, 67%)
    試験濃度:0.35, 3.5, 35 μg/mL
     


    6. 天色ポリフェノールの表皮細胞への効果

    6.1 表皮角化細胞の賦活と色素排出

    <試験方法>
    ヒト表皮角化細胞を24時間培養。その後、天色ポリフェノール含有DMEMを加え48時間培養し、細胞数測定。培養後RNA抽出よびcDNA合成、cDNAを用いてRT-qPCR
    試験濃度: 0.35, 3.5 μg/mL, †P<0.1, *P<0.05, ***P<0.001

    <<結果と考察>
    天色ポリフェノールはヒト表皮角化細胞に対して増殖促進作用を示しました。またメラニンの移送と貯留に関わるPAR2遺伝子の発現を抑制しました。

    ケラチノサイト(表皮角化細胞)増殖の乱れは表皮バリア機能の低下に関わります。表皮細胞の角層形成においては、オートファジーは主に細胞リモデリング、すなわち細胞内小器官のクリアランスの中心的な役割を果たしています。オートファジーによるターンオーバーの正常化とPAR2発現の低下により、メラノサイトで作られたメラニンが表皮に滞留することなく排出されることで、シミ・くすみ改善効果も期待されます。ターンオーバーの正常化は毛穴改善効果も期待できます。

    ※細胞リモデリング:細胞骨格の再編成、脱核、ミトコンドリアや細胞内小器官の除去、細胞死など

    * 皮膚角化層形成にともなう上皮細胞のダイナミズムを制御する分子メカニズム
     Osawa M. Cosmetology. 24 p84-89 (2016)


    6.2 保湿関連遺伝子の発現促進

    <試験方法>
    ヒト表皮角化細胞を24時間培養。その後、天色ポリフェノール含有DMEMを加え48時間培養。RNA抽出よびcDNA合成、cDNAを用いてRT-qPCR。試験濃度:0.35, 1.1, 3.5 μg/mL

    <遺伝子の特徴>
    FLG(Filaggrin: フィラグリン)
    ヒトが持つ保湿成分である天然保湿因子(Natural moisturizing factor:NMF)の元となるタンパク質。肌の代謝と共に分解されてアミノ酸となり、NMFとして角層水分を保持します。減少すると、肌のバリア機能や水分保持能が低下して乾燥の原因になります。
    TGM1(Transglutaminase: トランスグルタミナーゼ)
    肌のバリア機能に関わる「コーニファイドエンベロープ(Cornified envelope:CE)」の形成や成熟促進をする酵素。湿度が高い環境で活性が高まり、成熟したCEを生成します。CEの成熟は、肌のバリア機能や水分保持能の維持・向上に繋がります。
    HAS3(Hyaluronan synthase-3: ヒアルロン酸合成酵素-3 )
    表皮でのヒアルロン酸合成を担う酵素。HAS3の発現が増えることでヒアルロン酸産生が増加します。これにより表皮中のヒアルロン酸量が増加し、水分量が保たれ保湿機能が維持されます。
    GBA(β-glucocerebrosidase: β-グルコセレブロシダーゼ)
    セラミドの前駆体であるグルコシルセラミドからセラミド(セラミドEOP(セラミド1))を産生する酵素。表皮細胞で産生され、外的刺激から守るバリア機能を担っています。加齢などによりセラミドが減少すると乾燥の原因となります。
    SMPD(Sphingomyelin phosphodiesterase: スフィンゴミエリナーゼ)
    セラミドの前駆体の一つであるスフィンゴミエリンからセラミド(セラミドNS、セラミドAS(セラミド5))を産生する酵素。表皮細胞で産生され、肌の水分保持を担っています。作り出されるセラミド量が増えることで肌のバリア機能や水分保持力が向上します。

    <結果と考察>
    天色ポリフェノールはヒト表皮角化細胞において、保湿・バリア形成に関わる重要遺伝子であるFLG、TGM、HAS3、GBAおよびSMPDの発現量をそれぞれ促進させました。

    オートファジーは長寿遺伝子として注目のSirtuinのシグナル伝達とその調節において重要な関りをもちます(*1)。

    また、Sirtuinはフィラグリンの発現を促進することが知られています(*2,3)。天色ポリフェノールにによるフィラグリン発現促進効果には、ケラチノサイトのオートファジー活性化が関与している可能性も考えられます。

    *1:SIRT1 positively regulates autophagy and mitochondria function in embryonic stem cells under oxidative stress
     X Ou et al. Stem Cells. 32 1183–1194 (2014)
    *2:Loss of sirtuin 1 (SIRT1) disrupts skin barrier integrity and sensitizes mice to epicutaneous allergen challenge
     M Ming et al. J Allergy Clin Immunol. 135 (2014)
    *3:Adiponectin upregulates filaggrin expression via SIRT1-mediated signaling in human normal keratinocytes
     T Jin et al. Ann Dermatol. 29 (2017)


    7. 天色ポリフェノールのシミ・くすみ改善作用

    <試験方法>
    B16メラノーマ細胞を24時間培養。天色ポリフェノール含有DMEMを加え48時間培養後、RNA抽出よびcDNA合成。cDNAを用いてRT-qPCR。試験濃度:0.35, 1.1, 3.5 μg/mL **P<0.01

    <遺伝子の特徴>
    TYR(Tyrosinase: チロシナーゼ)
    メラニン産生に必須の酵素。紫外線などの影響で活性化し、色素細胞中でチロシンというアミノ酸から段階を経てメラニンになる際に作用します。シミなど色素沈着のある肌で活性化しています。
    MC1R(Melanocortin 1 receptor: メラノコルチン1受容体)
    色素細胞刺激ホルモンであるαMSH(α-Melanocyte-stimulating hormone: α-メラノサイト刺激ホルモン)の受容体。紫外線などの刺激により表皮細胞から過剰にαMSHが分泌され、色素細胞表面にあるMc1rと結合することでメラニン産生が誘導されます。メラニン産生が過剰に誘導されるとシミの原因となります。

    <結果と考察>
    天色ポリフェノールはB16メラノーマ細胞のTYRとMC1Rの発現を有意に抑制しました。チロシナーゼはメラニン合成の律速酵素です。またメラニン産生刺激ホルモンのレセプターの発現を抑制することで、メラニン産生を抑制します。
    抑制率:TYR (13, 32 , 21%), MC1R (9, 17, 15%)


    8. 天色ポリフェノールの抗酸化作用

    <試験方法>
    スーパーオキシド消去試験:キサンチン/キサンチンオキシダーゼ系により生じるO2-を測定
    過酸化脂質生成抑制試験:リノール酸が酸化してできる共役ジエンを測定
    ラジカル消去試験:DPPHラジカルの消去能を測定
    OHラジカル生成抑制試験:過酸化水素のフェントン反応により生じるOHラジカルを測定
    試験濃度: 3.5, 35, 110 μg/mL, †P<0.1, **P<0.01

    <結果と考察>
    天色ポリフェノールは、スーパーオキシド生成、過酸化脂質生成、DPPHラジカル、OHラジカル生成をそれぞれ抑制・消去しました。とくにOHラジカル生成抑制において著効を示しました。生体内で過剰に発生した過酸化水素は、強力な活性酸素種であるOHラジカルへと変化し、皮膚組織に障害を与えてしまいます。天色ポリフェノールが活性酸素種や過酸化脂質の生成を抑えることで、肌の老化や色素沈着を防ぐことが期待できます。
    スーパーオキシド消去率 (16%, 32%);過酸化脂質抑制率 (23%);DPPHラジカル消去率 (51%);OHラジカル抑制率 (17%, 59%)


    9. 亜麻の花の生存戦略

    亜麻は確実にたくさんの種子を残すため基本的に自殖性(自家受粉)の植物です。雄蕊の葯が開裂してから、数時間という短い時間で受粉します。一方、花粉には粘着性があることから、花粉媒介者である虫(ポリネーター)への接着性は高いと考えられています。実際にかなりの数のポリネーターが亜麻の花を訪れます。

    花姿はポリネーターの進行速度が速いとされる5弁形花冠。雄蕊を観察してみると、青い葯は柱頭の上にあり、これにより自家受粉が促進されます。一方、柱頭の先端が葯の上に伸びて他家受粉の可能性を高めているのも観察されます。

    このようなポリネーターを受容するための亜麻の花の構造とメカニズムにより、様々な割合で他家受粉も観察されています(*)。ミツバチによる受粉では種子数や種子重量の増加が報告されています。

    生き残り戦略として、自家受粉の成功確率は他家受粉よりも圧倒的に高いですが、遺伝的多様性という面も維持しているようです。

    開花後に虫が増えてくるわずかな時間に少しでもポリネーターを引き寄せるため、花を青く、そしてフラボノイド(虫の目に見える紫外線を吸収)を高含有しているのかもしれません。

    * Species richness and foraging activity of insect visitors in linseed (Linum usitatissimum L.)
     L Navatha et al. Current Biotica. 5 465-471 (2012)

     

            虻                 蜂                 蝶


    10. 原料情報

    <原料情報>
    ・産地:北海道更別村(十勝)※播種後栽培期間中無農薬栽培
    ・表示名称:アマ花エキス
    ・INCI: Linum Usitatissimum (Linseed) Flower Extract
    ・中文名称:亚麻(LINUM USITATISSIMUM)花提取物

    <安全性情報>
    ・24時間閉塞パッチテスト:刺激性なし
    ・SIRC細胞を用いた眼刺激性試験:刺激性なし
    ・ROSアッセイによる光毒性試験:陰性

    <SDGs(持続可能な開発目標)>
    本原料はSDGs17目標169ターゲットのうち、以下の8目標13ターゲットの達成に貢献します。
    4.7 / 5.4 / 8.9 / 9.4 / 9.b / 10.2 / 11.4 / 11.a / 12.8 / 12.a / 12.b / 17.16 / 17.17

    亜麻畑近くの天然記念物
    亜麻畑のすぐ近くには、北海道指定天然記念物のヤチカンバ群生地が存在します。一面に畑が広がる更別村でも、このような貴重な湿原が保存されています。かつては更別湿原と呼ばれる湿地でしたが、今は乾燥化が進み、ヤチカンバの株数も少なくなりつつあります。(北海道 更別村字上更別33)

    以下、「文化遺産オンライン」より引用。

    ・ヤチカンバは灌木性のカンバでヒメカンバ類ともよばれ、主として北極のツンドラ灌木原が今から数万年前の氷河期に十勝地方に入り、温暖となった後も生育条件に適した更別湿原に遺存されたものです。高温多雨の気候条件のもとに種の固定化が進み、新種となったものと考えられています。
    ・ヤチカンバの分布は、現在までのところ更別村と別海町でしか発見されておらず、氷河期以後の極地植物の隔離と、種の固有化、地質学、地理学、気象学、進化学上きわめて意義があるものとされています。
     


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