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こけもも若葉の活性型アルブチン

 
ふるさと元気プロジェクト
7種の植物性アルブチンは美白だけじゃない。
肌ミトコンドリアを紫外線から守るエイジングケア原料

 ~こけもも若葉の活性型アルブチン~2021.07.01

✔ 長野の雪深い山奥でも瑞々しい緑の葉を保ち続けるスーパーフード「こけもも」
✔ こけもも若葉から葉緑体保護成分である7種の植物性アルブチンを抽出
✔ 植物性アルブチンの膜保護機能を引き出すことで、UVAから肌ミトコンドリアを保護
✔ 美白だけじゃない! 真皮細胞外マトリックス産生促進作用でエイジングケア

 


1. こけもも若葉の活性型アルブチン:期待される効果と有効性情報

期待される効果

シワ・タルミ(抗光老化) 美白 敏感肌

有効性情報

■抗老化
ミトコンドリア保護(UVによる膜電位低下の抑制)
細胞賦活(線維芽細胞増殖促進)
コラーゲン産生(真皮コラーゲン量)
コラーゲン産生(COL1生成促進)
コラーゲン保護(MMP1活性阻害)
ヒアルロン酸産生(真皮ヒアルロン酸量)
ヒアルロン酸産生(HAS2生成促進)
エラスチン産生(ELN生成促進)
■美白・敏感肌
メラニン産生抑制(チロシナーゼ阻害)
メラニン産生抑制(細胞メラニン量)
メラニン産生抑制(細胞チロシナーゼ阻害)
メラニン産生抑制(TYR生成抑制)
メラニン産生抑制(MC1R生成抑制)
メラニン産生抑制(COX2生成抑制)
メラニン産生抑制(EDN1生成抑制)
メラニン産生抑制(SCF生成抑制)
メラニン産生抑制(PAR2生成抑制)
■活性酸素消去
抗酸化(DPPHラジカル)
抗酸化(O2-ラジカル)
抗酸化(過酸化脂質)


2. こけもも葉の強さの秘訣は植物性アルブチン ~葉緑体の膜保護成分~

こけもも(学名:Vaccinium vitis-idaea L.)は海外ではリンゴンベリーと呼ばれ、若返りの果実として今注目されているスーパーフードです。北欧の寒く厳しい自然環境で自生し、-40℃でも赤い果実をつけ、雪深い過酷環境でも青々とした葉を保つ強い環境適応力をもちます。

日本国内では主に高山に自生しており、絶滅も危惧されていることから、多くの地域で採取禁止となっています。これには、日本には自生していない生薬ウワウルシ(クマコケモモ)の代用として、こけももが一時期乱獲されたことも影響しているようです。こけももは希少植物であることから、我々は市販の苗から育てた園芸栽培品のみを使用しています。

美白成分として有名なβアルブチンの開発の原点が、実はこけももです。我々はこけもも葉に含まれる植物性アルブチン本来の役割を研究してきました。その結果、こけもも自身にとっての植物性アルブチンの役割は、紫外線や乾燥からの葉緑体の膜保護にあると考えました。そこで、こけもも葉に含まれる植物性アルブチンの膜保護機能を肌に活かすべく、原料開発を進めてきました。


3. こけもも若葉アルブチンの成分特性

 3-1. こけもも葉は7種の植物性アルブチンを含有

長野県長野市小田切地区の畑(標高650m超)より採取したこけももの葉の抽出物をLC-MSで分析したところ、少なくとも7種のアルブチン誘導体の存在が確認されました(図1)。とくに、アルブチンの糖部にカフェ酸が結合したカフェオイルアルブチンがこけももアルブチンの特徴的な成分であることが分かりました。カフェ酸はポリフェノールの一種で、カテコール構造をもつ強力な抗酸化成分です。
 

     図1 こけもも葉に含まれる7種の植物性アルブチン


 3-2. こけもも若葉にはアルブチン誘導体が多い
 

     図2 アルブチン誘導体は本葉(成熟葉)よりも若葉に多い

若葉には本葉よりも多くのアルブチン誘導体が含まれていることが分かりました(図2)。カフェ酸は抗酸化成分ですが、チロシナーゼ阻害活性をもつことから、美白因子でもあります。美白因子アルブチンにカフェ酸が結合したアルブチン誘導体は強い美白作用をもつことが期待できます。

我々は、芽摘みにより通常は捨てられてしまう未利用資源でもあるこけもも若葉を化粧品原料として活用しました。
 

            図3 総アルブチン量の比較

こけもも若葉のアルブチン量は、アルブチンが含まれることで知られる梨(文献)よりも多いことが確認されました(図3)。梨は長野県の畑から採取した新鮮な素材を用いました。同一条件で加工調製した抽出液のアルブチン量は、いずれも遊離アルブチンに変換して総アルブチン量として測定しました。

文献:佐々木千鶴、「未利用日本ナシ剪定枝を原料とした有用化学物質の生産」、2017年


4. こけもも 7種のアルブチンは美白だけじゃない ~ミトコンドリア膜保護作用~

 
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● 美白成分 βアルブチン(合成品)
● こけもも葉に内在する植物性アルブチンは、
 環境ストレスに対する膜保護因子
● 植物性アルブチンの真の能力を化粧品に

 4-1. ミトコンドリアは葉緑体と類似したオルガネラ

およそ20億年前、2種のバクテリアが細胞に共生(Symbiosis)し、それぞれ現在に至るのが葉緑体とミトコンドリアとされています。両器官の構造や機能は類似しており、また弱点も類似しています:
①エネルギーの生産工場
②細胞内共生により核とは異なる独自のDNAを持つ
③外膜と内膜の二重の膜構造をもつ
④非二重層を含む特異な脂質構造をもつ
⑤生体内における活性酸素の発生源
⑥紫外線や乾燥ストレスに弱い   など。

ミトコンドリアは体重の10%も占める体内のエネルギー工場で、これが紫外線などで傷害を受けると大量の活性酸素(ROS)を放出し、肌の老化の原因となります。


 4-2. 葉緑体保護成分であれば肌ミトコンドリアを守れるのでは

こけもものアルブチン誘導体は、こけもも自身にとっては葉緑体のチラコイド膜を紫外線や寒さ、乾燥から守る膜保護成分であると考えられます。そこで、葉緑体膜の防御機能をもつこけもも若葉アルブチンであれば、ミトコンドリア膜保護作用を発揮するのではないかと考えました。
 

 
ミトコンドリアは、酸素を取り込んでATP(アデノシン3リン酸)という高エネルギーを生産する生体の発電所です。真皮線維芽細胞はこのATPを利用して増殖し、コラーゲンやヒアルロン酸を合成しています。ATPが豊富に生産されることにより、綺麗な若々しい皮膚が実現します。

しかしミトコンドリアは紫外線や乾燥ストレスに弱く、ミトコンドリアのダメージはATPの生産低下だけでなく、活性酸素(ROS)の発生を増大させ、皮膚の老化を引き起こしてしまいます。


 4-3. ミトコンドリア膜電位低下は機能不全の指標

ミトコンドリアの機能不全はすなわちミトコンドリア膜電位の低下です。そこで、UVA照射した真皮線維芽細胞における、こけもも若葉アルブチンによるミトコンドリア膜電位低下の抑制作用を評価しました。

二重膜構造のミトコンドリアの内膜に配置するATP産生などを司る呼吸鎖複合体は、その代謝活性により内膜を境にH+イオン濃度勾配による電位差(ミトコンドリア膜電位)を作り出します.膜電位が保たれることはミトコンドリアの活性が維持されていることの指標となります。種々のストレス要因によりこの膜電位が消失(脱分極)すると、ミトコンドリアは脱分極とともにアポトーシスも引き起こします。
※参照:実験医学増刊 Vol.28 No.5 (2010)


 4-4. ミトコンドリア膜電位をJC-1試薬で測定

ミトコンドリア膜電位を評価するためにJC-1色素を用いました(図4)。ミトコンドリアが正常で膜電位差が保たれた状態ではJC-1が凝集し赤色の蛍光を発し、膜電位が低下するとJC-1が単量体として存在し緑色の蛍光を発します。この赤色と緑色の蛍光強度の変化をミトコンドリアの状態として評価することができます。
※DOJINDO JC-1 MitoMP Detection Kit技術資料より

     図4 ミトコンドリア膜電位変化のJC-1試薬による検出


 4-5. こけもも若葉アルブチンはUVAによるミトコンドリア膜電位低下を抑制

<試験方法>
真皮線維芽細胞を播種し37℃で一晩培養。こけもも若葉アルブチンを添加、37℃、24h保持、PBS(-) 洗浄後、HBSS(+) 置換。Solar simulator照射(カットフィルター付き, UVA: 10J/cm2)。JC-1(DOJINDO, JC-1 MitoMP Detection Kit#MT09)添加、37℃、30min保持、HBSS(+) 洗浄、蛍光顕微鏡観察、蛍光強度測定(Green: Ex 485nm / Em 535nm ; Red: Ex 535nm / Em 590)

図5 こけもも若葉アルブチンによるミトコンドリア膜電位低下の緩和作用(画像と蛍光強度比)

<結果・考察>
緑色は膜電位が低下した機能不全(アポトーシスを起こした)の細胞、赤色は健康な細胞を示しています。

真皮線維芽細胞へのUVA照射は、ミトコンドリアの膜電位を低下(脱分極)させますが(画像G2、M2)、こけもも若葉アルブチンはUVAによるミトコンドリア膜電位の低下を防ぎました(画像G3、R3、M3)。

Red/Greenの蛍光強度比を求めると(グラフ)、UVA照射により低下する膜電位に対し(非添加)、こけもも若葉アルブチン添加によりUVA未照射と同レベルで膜電位が維持されることが示されました。

こけもも若葉アルブチンには、紫外線から肌のミトコンドリアを保護することで、シワ・タルミなどの光老化を防ぐ作用が期待できます。またミトコンドリア機能不全を防ぐことは、ROS生成抑制や炎症性サイトカイン生成抑制によるメラノジェネシスの抑制にもつながります。


5. こけもも若葉アルブチンの抗老化作用

 5-1. 細胞賦活作用

<試験方法>
真皮線維芽細胞を24時間培養。その後、こけもも若葉アルブチン、βアルブチン(合成品)含有EMEMを加え48時間培養し、細胞数をMTT還元法で測定
試験濃度: 3.7, 37, 370 μg/mL t検定:**P<0.01

図6 こけもも若葉アルブチンの細胞賦活作用

<結果と考察>
こけもも若葉アルブチンは濃度依存的に真皮線維芽細胞の増殖促進効果を示しました。細胞賦活とは、正常細胞の増殖が活発になることを意味しています。線維芽細胞は真皮層においてコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸を作り出す細胞で、これにより細胞外マトリックスが構築されます。一方、βアルブチン(こけももと同じアルブチン濃度)には細胞賦活効果は見られず、こけもも葉由来7種の植物性アルブチンならではのミトコンドリア保護・活性化作用が示唆されます。


 5-2. コラーゲンおよびヒアルロン酸産生促進作用

<試験方法>
真皮線維芽細胞を24時間培養。その後、こけもも若葉アルブチン、βアルブチン(合成品)含有EMEMを加え48時間培養し、ELISAでコラーゲンとヒアルロン酸量を測定
試験濃度: 3.7, 37, 370 μg/mL

図7 こけもも若葉アルブチンのコラーゲン産生およびヒアルロン酸産生促進作用

<結果と考察>
こけもも若葉アルブチンは真皮線維芽細胞のコラーゲン産生とヒアルロン酸産生を促進させました。

加齢や紫外線ストレスはミトコンドリアが作り出すATPを低下させ、これにより細胞の増殖速度が落ち、細胞から作りだされる成分も少なくなってしまいます。こけもも若葉アルブチンはミトコンドリアを保護することで細胞を元気にし、細胞の物質生産を促進させます。これによりシワ・タルミ改善効果が期待できます。一方、βアルブチン(こけももと同じアルブチン濃度)自体にはコラーゲンとヒアルロン酸の産生促進効果は見られませんでした。


 5-3. コラーゲンおよびヒアルロン酸産生遺伝子発現促進

<試験方法>
真皮線維芽細胞を24時間培養。その後、こけもも若葉アルブチン、βアルブチン(合成品)含有EMEMを加え24時間培養。RNA抽出よびcDNA合成。cDNAを用いてRT-qPCR
試験濃度: 3.7, 11, 37 μg/mL t-検定: *P<0.05, **P<0.01, †P<0.1

図8 こけもも若葉アルブチンのコラーゲンおよびヒアルロン酸産生遺伝子の発現促進作用

<遺伝子の特徴>
COL1(Collagen-1:Ⅰ型コラーゲン)
真皮に存在する線維芽細胞から産生され、肌の弾力や強度に関与するコラーゲンの1つ。年齢と共にコラーゲンは減少・変性し、ハリ低下やシワ発生の原因となります。
HAS2(Hyaluronan synthase-2: ヒアルロン酸合成酵素-2)
真皮でのヒアルロン酸合成を担う酵素。真皮に存在する線維芽細胞に発現し、高分子のヒアルロン酸を作り出します。ヒアルロン酸は肌の水分保持に関与し、肌にハリを与えてシワを防ぎます。

<結果と考察>
こけもも若葉アルブチンはCOL1とHAS2の発現を促進させました。真皮にはⅠ型コラーゲン(COL1)が多く存在し、肌にハリや弾力を与え、シワを作りにくくします。真皮ヒアルロン酸は真皮中の水分を保持し、肌にハリを与えシワの形成を抑えます。これらのことから、こけもも若葉アルブチンには、コラーゲンとヒアルロン酸の産生を促進させ、肌に潤いとハリを与えて若々しい肌を保つ効果が期待できます。UVによるミトコンドリアDNAへのダメージは、コラーゲン生合成遺伝子の発現を低下させることで、皮膚の光老化を誘導することが分かっています(文献)。
発現率:COL1 (148%, 125%, 139%), HAS2 (514%, 437%, 343%)

 本原料には細胞賦活やコラーゲン産生などにおいて、βアルブチンには見られない抗老化作用が確認されています。このことから、植物性アルブチンはすなわち「活性型アルブチン」と考え、本原料を「こけもも若葉の活性型アルブチン」と名付けました。

文献:Partial depletion of mitochondrial DNA from human skin fibroblasts induces a gene expression profile reminiscent of photoaged skin.
Schroeder P et al. J Invest Dermatol. 128 2297–303 (2008)


 5-4. コラーゲン保護

<試験方法>
MMP1活性阻害試験:ヒトリコンビナントMMP1と検体をインキュベートした後、基質と反応させ比色測定
**P<0.01, *** P<0.001

 

<結果と考察>
コントロール(同一溶媒)のMMP1活性に対して、こけももアルブチンはMMP1活性を最大で71%抑制しました。

MMP1(マトリクスメタプロテアーゼ-1)は、肌のコラーゲンの分解を促進する酵素です。加齢や紫外線などによって発生したROSは線維芽細胞を刺激します。刺激を受けた線維芽細胞は、コラーゲンの分解酵素であるMMP1の産生を促進します。分解酵素によるコラーゲンの減少や変性は、肌の柔軟性や水分保持機能を低下させます。

こけももアルブチンはMMP1活性を抑制することで抗光老化作用を発揮します。


 5-5. エラスチン産生遺伝子発現促進

図9 こけもも若葉アルブチンのエラスチン産生遺伝子の発現促進作用

<遺伝子の特徴>
ELN(Elastin: エラスチン)
肌の弾力を維持するために重要なタンパク質。コラーゲンと共に肌のハリの維持に関与します。真皮に存在する線維芽細胞から産生され、紫外線や加齢などにより減少・変質するとハリ低下やシワの原因となります。

<結果と考察>
こけもも若葉アルブチンはELNの発現を促進させました。エラスチン線維はコラーゲン線維を支えるように存在し、肌に弾力やしなやかさを与え、シワのできにくい肌を保ちます。
発現率:106%, 138%, 144%


6. こけもも若葉アルブチンの美白作用

 6-1. メラニン産生抑制作用(チロシナーゼ阻害)

<試験方法>
チロシナーゼ活性阻害試験:メラニン合成酵素チロシナーゼに対する阻害効果を、ドーパからドーパクロムの酵素生成物の量で測定  
試験濃度:0.1, 0.37, 1.1 mg/mL

図10 こけもも若葉アルブチンのチロシナーゼ阻害作用

<結果と考察>
こけもも若葉アルブチンはチロシナーゼ活性を阻害しました。チロシナーゼはメラニン産生に必須の酵素です。紫外線などの影響で活性化し、色素細胞中でチロシンというアミノ酸から段階を経てメラニンになる際に作用します。シミなど色素沈着のある肌で活性化しています。
抑制率:23%, 43%, 51%


 6-2. メラニン産生抑制作用(B16メラノーマ細胞のメラニン産生とチロシナーゼ阻害)

<試験方法>
B16メラノーマ細胞を24時間培養。その後、αMSH(メラノサイト刺激ホルモン)、テオフィリンおよびこけもも若葉アルブチン含有DMEMを加え72時間培養
①メラニン量: 培養後、細胞数を測定。メラニン可溶化後、405nmでメラニン測定(試験濃度:37, 110, 190 μg/mL)
②酵素活性: 培養後、細胞生存率を測定。L-DOPAを添加、37℃60分間反応後、チロシナーゼ活性を測定(試験濃度:11, 37, 110 μg/mL) t-検定: *P<0.05, **P<0.01

図11 こけもも若葉アルブチンのB16メラノーマ細胞における メラニン産生抑制およびチロシナーゼ活性阻害作用

<結果と考察>
αMSHとテオフィリンでB16メラノーマ細胞を刺激することで、メラニン産生量とチロシナーゼ活性の増大が見られました(非添加)。テオフィリンは細胞に日焼けに似た状態を誘発する薬剤です。αMSHはMC1Rの活性化を介して転写因子MITFを刺激し、チロシナーゼ産生を誘導します。メラニン産生刺激B16細胞において、こけもも若葉アルブチンは濃度依存的にメラニン産生とチロシナーゼ活性を抑制しました。なお本原料の添加は、メラノーマ細胞の生存率には影響を与えませんでした(統計的有意差なし)。

αMSHは皮膚ではROSにより産生が亢進します。こけもも若葉アルブチンがミトコンドリアを保護してROSの発生量を低下させることで、αMSH自体の産生を抑えることにもつながります。

こけもも若葉アルブチンに含まれる総アルブチン量をもとに、メラニン産生抑制作用についてβアルブチン(合成品)と活性を比較しました(図右下)。メラニン産生抑制作用におけるIC50(50%阻害濃度)の結果から、こけもも若葉アルブチンはβアルブチンよりも1.7倍高い活性をもつことが示されました。

βアルブチンの合成アセチル誘導体は、βアルブチンよりも高いメラニン産生抑制作用とチロシナーゼ活性阻害作用を持つことが報告されています(文献)。アセチルアルブチンの存在は本原料でも確認されており、こけもも若葉に含まれる複数のアルブチン誘導体には高い美白効果があることが示唆されます。

メラニン産生抑制(阻害率):メラニン量(7%, 15%, 30%)、チロシナーゼ活性(15%, 32%, 65%)

文献:Investigation of the pro-apoptotic effects of arbutin and its acetylated derivative on murine melanoma cells
L Jiang et al. Int J Mol Med. 41 1048–54 (2018).


 6-3. メラニン産生抑制作用(B16メラノーマ細胞のメラニン合成関連遺伝子抑制)

<試験方法>
B16メラノーマ細胞を24時間培養。こけもも若葉アルブチン含有DMEMを加え48時間培養後、RNA抽出よびcDNA合成。cDNAを用いてRT-qPCR。
試験濃度:11, 37, 110 μg/mL t-検定: *P<0.05, **P<0.01

図12 こけもも若葉アルブチンのメラニン産生関連遺伝子の発現抑制作用

<遺伝子の特徴>
TYR(Tyrosinase: チロシナーゼ)
メラニン産生に必須の酵素。紫外線などの影響で活性化し、色素細胞中でチロシンというアミノ酸から段階を経てメラニンになる際に作用します。シミなど色素沈着のある肌で活性化しています。
MC1R(Melanocortin 1 receptor: メラノコルチン1受容体)
色素細胞刺激ホルモンであるαMSH(α-Melanocyte-stimulating hormone: α-メラノサイト刺激ホルモン)の受容体。紫外線などの刺激により表皮細胞から過剰にαMSHが分泌され、色素細胞表面にあるMC1Rと結合することでメラニン産生が誘導されます。メラニン産生が過剰に誘導されるとシミの原因となります。

<結果と考察>
こけもも若葉アルブチンはB16メラノーマ細胞のTYRの発現を濃度依存的に抑制しました。MC1Rの発現量も18%と低い数値ではあるものの有意に抑制しました。

チロシナーゼはメラニン合成の律速酵素です。またメラニン産生刺激ホルモンのレセプターの発現を抑制することで、メラニン産生を抑制します。

抑制率:TYR (32, 40 , 50%), MC1R (18, 7, 18%)


 6-4. メラニン産生抑制作用(表皮角化細胞の炎症関連遺伝子発現抑制)

<試験方法>
ヒト表皮角化細胞を24時間培養。その後、こけもも若葉アルブチン含有DMEMを加え48時間培養。その後、RNA抽出よびcDNA合成。cDNAを用いてRT-qPCR。
試験濃度: 11, 37 μg/mL t-検定: *P<0.05, **P<0.01, †P<0.1

図13 こけもも若葉アルブチンの炎症関連遺伝子の発現抑制作用

<遺伝子の特徴>
COX2(Cyclooxygenase-2: シクロオキシゲナーゼ-2)
炎症性エイコサノイドであるプロスタグランジンE2(Prostaglandin E2:PGE2)を産生する酵素。紫外線などの影響により表皮細胞でCOX2が増加し、PGE2が過剰に作り出されます。このPGE2が色素細胞を刺激して、メラニン産生を促進します。
EDN1(Endothelin-1: エンドセリン-1)
表皮細胞から産生されるサイトカインの1つ。紫外線などの影響により表皮細胞で作り出されたエンドセリン-1は色素細胞を刺激し、色素細胞内のチロシナーゼを活性化させメラニン産生を促進します。
SCF(Stem cell factor: 幹細胞増殖因子)
紫外線などの刺激により表皮細胞から産生され、メラノサイトを活性化させる因子。SCFの刺激を受けた色素細胞はメラニンを合成します。過剰に作り出されるとシミの原因となります。
PAR2(Protease-activated receptor-2: プロテアーゼ受容体)
メラノサイトから表皮細胞へのメラニンの移行に関わり、表皮細胞内にメラニンを貯留させてしまうタンパク質。紫外線や炎症によって増加し、表皮細胞が過剰にメラニンを抱え込むとシミの原因となります。

<結果と考察>
こけもも若葉アルブチンはヒト表皮角化細胞において、シクロオキシゲナーゼ-2(COX2)、エンドセリン-1(EDN1)、肝細胞増殖因子(SCF2)ならびにプロテアーゼ活性化受容体(PAR2)の遺伝子発現を抑制しました。

紫外線などによって発生する活性酸素種(Reactive Oxygen Species, ROS)は、表皮細胞の様々な炎症関連の“遺伝子スイッチ”を入れます。増加したCOX2はPGE2を過剰に産生し、色素細胞を刺激します。EDN1は表皮細胞から分泌され、EPBRというレセプターを介してメラノサイトに信号を伝達し、メラノサイトのチロシナーゼ活性を高めます。また紫外線や炎症はSCFとPAR2も増加させ、メラノサイトを活性化させてから、表皮細胞が過剰にメラニンを抱え込む原因となります。こけもも若葉アルブチンには、これらの因子を抑制することによる美白効果が期待できます。
発現抑制率:COX2 (51%, 44%), EDN1 (79%, 76%), SCF (23%, 26%), PAR2 (33%, 37%)


7. こけもも若葉アルブチンの抗酸化作用

 7-1. DPPHラジカル消去作用

<試験方法>
ラジカル消去試験:DPPHラジカルの消去能を測定
試験濃度:11 μg/mL
(βアルブチンは合成品を用い、こけもも若葉と同アルブチン濃度に設定)

図14 こけもも若葉アルブチンのDPPHラジカル消去作用

<結果と考察>
こけもも若葉アルブチンはラジカル消去活性を示しました。その活性は同じこけももの本葉や果実よりも強く、またアルブチンを含むことで知られる梨の葉よりも強いことが分かりました。DPPHラジカルの消去作用によって抗酸化活性の指標とすることができます。こけもも若葉アルブチンは、紫外線暴露により生じるROSを消去することにより光老化抑制効果が期待できます。


 7-2. 過酸化脂質生成抑制およびスーパーオキシド消去作用

<試験方法>
過酸化脂質生成抑制試験:リノール酸が酸化してできる共役ジエンを測定
スーパーオキシド消去試験:キサンチン/キサンチンオキシダーゼ系により生じるO2-を測定
試験濃度: 37, 110, 1100 μg/mL

図15 こけもも若葉アルブチンの過酸化脂質およびスーパーオキシド生成抑制作用

<結果と考察>
こけもも若葉アルブチンは、過酸化脂質生成抑制作用とスーパーオキシド消去作用を示しました。紫外線暴露により生じるROSを消去することにより光老化抑制効果が期待できます。また過酸化脂質の生成を抑制することにより、過脂化メラニンの産生を抑え、皮膚のターンオーバーを正常化することによる、美白効果も期待できます。
過酸化脂質抑制率(51%, 67%, 86%); スーパーオキシド消去率 (16%, 42%, 84%)


8. 肌の老化とミトコンドリア

ミトコンドリアは酸素を取り込んでエネルギー(ATP)を生産する生体の発電所で、体重の実に10%も占めると言われています。DNAを独自に保有していますが、核DNAと異なり「室外」にあるため、紫外線などで傷つきやすくなります。紫外線や乾燥ストレスに曝されたミトコンドリアは、どんどん不良品になってしまいます。ミトコンドリアのダメージは活性酸素(ROS)の発生をさらに増大させ、不良ミトコンドリアが蓄積してしまい、生体の老化を引き起こします。いわゆるテロメア老化とは異なる老化メカニズムです。

ミトコンドリアダメージによるROSレベルの上昇が皮膚老化を進行させることが報告されています(文献)。表皮では皮膚の新陳代謝低下によりバリア機能の低下や乾燥が引き起こされます。真皮では、コラーゲン・ヒアルロン酸・エラスチンといったECM*の産生低下や変性が、シワ・タルミ・ハリ低下の原因となります。肌のエイジングケアにおいては、ミトコンドリア機能不全を防ぎ、細胞を活性化させることが重要です。
*ECM: Extracellular matrix(細胞外マトリックス)

文献:Mitochondrial oxidative stress caused by Sod2 deficiency promotes cellular senescence and aging phenotypes in the skin.
MC Velarde et al. AGING 4 1 (2012)

           ROS: 活性酸素種 HA: ヒアルロン酸 ELN: エラスチン COL: コラーゲン


9. 製品情報:ふるさと元気プロジェクト & SDGs

<原料情報>
・長野市小田切地区の山中で自然農法により栽培されたこけももの若葉を使用
 ※本原料には、市販のリンゴンベリー(こけもも)苗を一定の管理区域内で育てた園芸栽培品のみを使用しています。
・表示名称:コケモモ葉エキス
・INCI: Vaccinium Vitis-Idaea Leaf Extract
・中文名称:越桔(VACCINIUM VITIS-IDAEA)叶提取物

<SDGs(持続可能な開発目標)>
本原料はSDGs17目標169ターゲットのうち、以下の8目標16ターゲットの達成に貢献します。
3.c / 4.4 / 4.5 / 4.7 / 8.9 / 9.4 / 9.b / 10.2 / 11.4 / 11.a / 12.5 / 12.8 / 12.a / 12.b / 17.16 / 17.17

<安全性情報>
・24時間閉塞パッチテスト:刺激性なし
・SIRC細胞を用いた眼刺激性試験:刺激性なし
・ROSアッセイによる光毒性試験:陰性
 


「農×福×粧連携」の取り組み
本原料のコケモモの栽培には、長野市小田切地区で農を通じた地域活性化に取り組む安西推さん*を中心に、地元農家だけでなく、福祉における特別支援教育を行っている「NPO法人翔和学園」の学生さんたちも自然教育の一環として携わっています(下図)。
*NPO法人小田切エルダーフラワープロジェクト 理事長

サティス製薬は本開発原料を使った化粧品OEM事業を通じて、植物のアップサイクル技術の開発、地域共創、「農福粧連携」の取り組みに貢献していきます。
 


ふるさと元気プロジェクトの目指す化粧品のバリューチェーン
地域農産品(一次産品)のもつ固有の価値(バリュー)に
  ①化粧品OEM会社の有する技術力
  ②化粧品販売メーカーの企画販売力
  ③消費者の評価
 などが加わることにより、一次産品の価値が連鎖的に高まります。消費者は化粧品製品と産地に共感を覚え、産地への共感は、SNSによる拡散、一次産品の購買行動、観光など、地域共創へとつながります。
 化粧品により「長野小田切のリンゴンベリー(こけもも)」に付与された新しいバリューが、生産者にフィードバックされます。
 



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