低分子金魚花グルクロニド
【世界初】植物の希少成分アピゲニングルクロニド含有原料
心理的ストレスによる乾燥肌を特異的にケア2019.07.22
✔ 心理的ストレスによる肌の乾燥で悩んでいる人がいる
✔ ストレスによる乾燥肌の一因は表皮HAS3の低下であることを初めて発見
✔ HAS3低下の抑制には植物の希少成分アピゲニングルクロニドが有効であることを発見
✔ アピゲニングルクロニドを高蓄積する金魚花由来の世界初の原料
HAS3: 表皮ヒアルロン酸合成酵素-3
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1. 心理的ストレスは皮膚の乾燥と菲薄化を引き起こす
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2. 心理的ストレス状態では表皮のHAS3が低下することを発見
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3. 心理的ストレスによるHAS3低下の推定メカニズム
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4. 新原料、低分子金魚花グルクロニドはストレスによる乾燥から肌の潤いを守る
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5. 「フラボノイドメタボロン」で注目される多彩な金魚花の特異な能力
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6. 金魚花はフラボノイドを高蓄積
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7. 金魚花フラボノイドは希少成分アピゲニングルクロニド
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8. 低分子金魚花グルクロニドは高浸透性 -テープストリッピング法-
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9. 低分子金魚花グルクロニドに期待されるその他注目の機能
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10. 抗酸化作用
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11. 有効性情報と期待される効果
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12. 製品情報
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13. ストレス関連の情報
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14. 参考文献
目 次
1. 心理的ストレスは皮膚の乾燥と菲薄化を引き起こす
<ストレス応答とは>
外界のストレッサーに対して、生体が急性ストレス応答を示し、ストレスホルモンであるコルチゾールが分泌されます。ストレスが持続すると、ホメオスタシスが崩壊し、ストレス障害となります。
コルチゾールは副腎皮質ホルモンであるグルココルチコイドの一種で、ストレスとの関連でもっともよく研究されている物質です。コルチゾールは代謝系、免疫系、血管系、中枢系にも影響を与え、心理的・身体的な健康状態を考えるうえで重要なホルモンです。
身の回りにある様々なストレッサー
<皮膚は心の鏡>
末梢神経繊維が表皮内に入り込み、皮膚の免疫細胞に接触。脳からの神経伝達物質が直接皮膚に受け渡されている。心と体が皮膚の中でつながっている事実から、皮膚は心を映す鏡。
※細井ら、ハーバード大学皮膚科学研究所、1993年
<内因性コルチゾールは皮膚の乾燥と菲薄化に関わる>
外用薬のステロイドの長期的な使用によって皮膚萎縮や菲薄化などの副作用が生じますが、これらは老化に伴う生理的プロセスでも生じます。皮膚菲薄化には内因性のストレスホルモンであるコルチゾールが関与していることが示唆されています※。皮膚菲薄化は透過性とTEWL(水分蒸散)を上昇させ、皮膚の乾燥も引き起こします1)。
※サティス製薬調べ: ストレスが肌のハリ低下に関与していることを明らかに
心理的ストレスが皮膚へ与える影響も多くの研究で明らかにされています。心理的ストレスにより、皮膚バリア機能2,3)と緻密な角層構造4)が損なわれ、表皮の自然免疫・適応免疫も低下させてしまいます5,6)。
つまり、持続的ストレスによりホルモンバランスがコルチゾールに偏ることにより、皮膚の乾燥が進行してしまうことが予想されます。
今回、ストレスホルモンが表皮細胞の保湿因子に与える影響に焦点をあてて研究を進めた結果、ストレスによる乾燥肌の新しい因子を特定し、さらにそれを制御可能な新規の植物原料の開発に成功しました。
2. 心理的ストレス状態では表皮のHAS3が低下することを発見
心理的ストレス状態における表皮細胞の保湿関連遺伝子の変化を解析した結果、従来知られているフィラグリン(FLG)低下に加えて、表皮ヒアルロン酸合成酵素-3(HAS3)の発現が低下していることを発見しました。そこで、ストレスによる乾燥肌をケアするため、HAS3低下を抑制する天然原料を開発しようと考えました。
HAS3(Hyaluronan synthase-3: ヒアルロン酸合成酵素-3 )
表皮でのヒアルロン酸合成を担う酵素。HAS3の発現が増えることでヒアルロン酸産生が増加します。これにより表皮中のヒアルロン酸量が増加し、水分量が保たれ保湿機能が維持されます。
3. 心理的ストレスによるHAS3低下の推定メカニズム
<ストレスによりホルモンバランスが崩れてHAS3低下>
11β-HSD1により産生される活性型コルチゾールは炎症抑制作用をもちます。その後、健全な状態では、11β-HSD2によりコルチゾンに変換され不活性化されます。しかし、ストレスフルな状態が続くと、コルチゾンが11β-HSD1の働きでコルチゾールに変換されて再活性化されます。このストレス状態での表皮のHAS3の低下には、以下のメカニズムが推定されました。
メカニズム①
ヒアルロン酸は、N-アセチル-D-グルコサミンとD-グルクロン酸が結合した2糖繰り返しの高分子多糖です。つまりヒアルロン酸の材料の半分はグルクロン酸です。コルチゾールは細胞内のUDP-グルクロン酸と結合し、HAS3の基質であるUDP-グルクロン酸を減少させてしまうことにより、ヒアルロン酸産生を低下させます。コルチゾールとUDP-グルクロン酸を結合させる酵素UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼは、皮膚でも発現していることが報告されています8)。
メカニズム②
ストレス状態により、増殖因子TGF-β(transforming growth factor-β)が過剰分泌します。TGF-βは表皮細胞のHAS3を抑制するため、ヒアルロン酸量が低下してしまいます9)。TGF-βはアトピー性皮膚炎の悪化因子としても知られています。
数ある天然成分のなかでも、
ヒアルロン酸と同じく分子内にグルクロン酸をもつ植物の希少成分、
「アピゲニングルクロニド」であればヒアルロン酸代謝を制御できるのでは?
アピゲニングルクロニド:APG
APG: アピゲニングルクロニド
アピゲニングルクロニド(APG)※は、以下のポイントでHAS3低下抑制効果を発揮すると推測されます。
(※アピゲニン配糖体の糖部がグルクロン酸からなる。通常、糖部はグルコースであるため、植物では希少成分)
メカニズム①
APGは、グルクロン酸とコルチゾールを結合させる酵素、グルクロン酸転移酵素を阻害することで、ヒアルロン酸合成の材料であるUDP-グルクロン酸の減少を抑える。
メカニズム②
抗炎症成分として知られるアピゲニンは、TGF-β阻害作用をもつことから10)、APGにも同様の作用がある。
メカニズム③
APGは、グルクロン酸をもつ特徴的な構造により、HAS3を直接活性化する。
メカニズム④(本試験は細胞系へのコルチゾールの直接添加という前提があるものの)
アピゲニンはフラボノイドのなかでも11β-HSD1(ストレス促進)の阻害活性が高く、11β-HSD2(ストレス抑制)は阻害しないことが報告されている11)。11β-HSD1の阻害は、表皮のコルチゾールの低減に有効である12)。APGは11β-HSD1を選択的に阻害し、コルチゾールの過剰産生を抑制する。
希少成分アピゲニングルクロニドの供給源として金魚草の花に着目して原料開発
4. 新原料、低分子金魚花グルクロニドはストレスによる乾燥から肌の潤いを守る
ヒト表皮角化細胞にコルチゾールを添加し、ストレスによる乾燥肌を再現
<試験方法>
ヒト表皮角化細胞を24時間培養。コルチゾール、低分子金魚花グルクロニド含有DMEMを加え48時間培養。その後、RNA抽出よびcDNA合成。cDNAを用いてRT-qPCR
試験濃度: 2, 20 μg/mL
<結果と考察>
皮膚には全身の総ヒアルロン酸量の約50%が存在し、皮膚真皮層のみならず、表皮層、およびその最外層の角層にもヒアルロン酸は存在します7)。
ストレスホルモンであるコルチゾールをヒト表皮角化細胞に添加すると、保湿成分である表皮ヒアルロン酸の合成遺伝子HAS3の発現量が低下しました。表皮角化細胞のHAS3遺伝子の発現低下がストレスによる乾燥肌の原因の一つであることを示唆する本知見は、我々が知る限り世界で初めての発見です。
ここに、新規化粧品原料の低分子金魚花グルクロニドを添加すると、コルチゾールによる表皮ヒアルロン酸産生能の低下が抑制され、ストレスフリー状態の活性に維持されることを発見しました。ストレス時の表皮ヒアルロン酸の減少を防ぐことで、肌のインナードライを防ぎ、さらに菲薄化などの肌老化を防ぐことが期待されます。
皮膚のヒアルロン酸は真皮と表皮に関わらず代謝とターンオーバーが数日と非常に速いことが知られており、この代謝回転の速さが、表皮の重層化構造の維持など皮膚の恒常性維持に重要であると考えられています。しかし、現代社会で晒される持続的高ストレス状態は、ヒアルロン酸産生能自体を低下させてしまい、乾燥から誘導される様々な皮膚トラブルから、さらには老化促進へつながると考えられます。
5. 多彩な花色発現で「フラボノイドメタボロン」研究が進む金魚花の特異な能力に注目
オオバコ科(旧ゴマノハグサ科)キンギョソウ属、学名「Antirrhinum majus」
古代ギリシャや中国では薬用として利用されていました。金魚のような花姿がドラゴンの口のようにも見えることから、英語名スナップドラゴンとも呼ばれます。花弁が多彩な色を形成する鑑賞花としての能力が高く、ビタミンCも豊富で食卓を彩るエディブルフラワーとしても利用されています。
フラボノイドメタボロンはフラボノイドの代謝、花色形成に関わる酵素群が複合体を形成したもので、2018年に東北大学が世界で初めて存在を証明しました。その研究素材として使われているのが金魚草で、花弁が黄、赤、ピンク、白、オレンジ、紫、複色、クリムゾンなどの多彩な色を形成します。
この花色の安定化に植物の希少成分アピゲニングルクロニドが関与していることが分かってきました。そこで、金魚花(金魚草の花)を用いて、アピゲニングルクロニドを有効成分とする抗ストレス化粧品原料を開発しました
6. 金魚花はフラボノイドを高蓄積
金魚花に含まれるフラボノイドをLCで分析し、他の植物と比較しました。金魚花には非常に多くのポリフェノールが含まれており、これは同じ黄色の花である黄菊よりもはるかに多く、さらにポリフェノールの多い植物として有名なじゃばら(ナリルチン)やえごま葉(ロスマリン酸)と匹敵するほどの含有量でした。このように、植物フラボノイドの研究素材として活用されてきた金魚花は、フラボノイドを高含有していることが分かりました。このフラボノイドが植物では希少なグルクロン酸配糖体であることも注目すべき点です。
7. 金魚花フラボノイドは希少成分アピゲニングルクロニド
金魚花に元来含まれるフラボノイドの主要成分は、アピゲニンジグルクロニド(APGG)とアピゲニン(モノ)グルクロニド(APG)であることが分かりました。アピゲニンジグルクロニドについては、分子量が比較的大きく、経皮吸収性に課題があると考えました。
そこで、当社独自技術であるオートファジー(ATG)技術で抽出することにより、低分子型であるアピゲニングルクロニドを増加させることに成功し、本原料を「低分子金魚花グルクロニド」と名付けました。アグリコン型のアピゲニンも増加していることが分かります。フラボノイドは低分子化することで、経皮吸収性が高まると考えられます。また、グルクロン酸配糖体であるアピゲニングルクロニドは酸性フラボノイドに分類されることから、肌の弱酸性の維持にも寄与することも期待できます。このようなフラボノイドのグルクロン酸配糖体は植物では珍しく、金魚草では花色の安定性などに寄与していると考えられています。
このフラボノイドのグルクロン酸配糖体は、人のフラボノイド代謝との関わりについて研究されています。人がフラボノイドを経口摂取すると、腸管から吸収された後、腸管や肝臓で水溶化のためにグルクロン酸抱合が行われ、フラボノイドグルクロニドになります。これは外界からの低分子化合物に対する人体の解毒機構の一つです。このことから、植物由来のアピゲニングルクロニドは人にとって安全性の高い成分であると考えられます。
<オートファジーとは>
・2016年ノーベル生理学・医学賞(大隅良典先生が受賞)により有名になった生命現象
・細胞内の物質を分解することによって低分子化して新陳代謝に活用する
8. 低分子金魚花グルクロニドは高浸透性 -テープストリッピング法-
<試験方法>
低分子金魚花グルクロニド含浸パッチを皮膚に貼付し、パッチ剥離後皮膚を洗浄し、テープストリッピングで角層を1層ずつ採取しました。テープを抽出し、LC-MS(SIMモード)で分析しました。原料の成分組成に対する比として算出
<結果と考察>
テープで採取した角層中のフラボノイド量をLC-MSにより高感度で分析しました。健常な肌に吸収される物質の分子量は600以下が目安とされていますが、本試験においても分子量622のアピゲニンジグルクロニドと分子量446のアピゲニンモノグルクロニドとでは角層浸透性に大きな違いが確認されました。金魚花に元来含まれるアピゲニンジグルクロニドを独自技術でモノグルクロニドに変換したことで、経皮吸収性の高い低分子金魚花グルクロニドの原料開発に成功しました。データには示しませんが、アグリコン型のアピゲニンも高浸透することを確認しています。
9. 低分子金魚花グルクロニドに期待されるその他注目の機能
金魚花および金魚花グルクロニドの抗掻痒(抗かゆみ)作用 -論文情報-
低分子金魚花フラボノイドに含まれるアピゲニングルクロニドには、ヒスタミンなどのアレルギー物質を抑え、痒み(かゆみ)を抑えたり、炎症性因子(PAF、COX2、PGE2抑制、NF-κB)を抑制することによる、抗掻痒作用が報告されています13)。また、金魚花には、炎症性サイトカインを抑制し、創傷の修復速度を上げる効果をもつことが報告されています14)。これらのことから、低分子金魚花グルクロニドには、痒みから始まる皮膚炎の悪化現象である「イッチスクラッチサイクル」を停止させる作用が期待できます。
10. 抗酸化作用
<試験方法>
ラジカル消去試験:DPPHラジカルの消去能を測定
過酸化脂質生成抑制試験:リノール酸が酸化してできる共役ジエンを測定
スーパーオキシド消去試験:キサンチン/キサンチンオキシダーゼ系により生じるO2-を測定
試験濃度:200μg/mL
<結果と考察>
低分子金魚花グルクロニドは、ラジカル消去活性、過酸化脂質生成抑制作用、スーパーオキシド消去作用を示しました。ストレスは活性酸素の発生を増大させ、インナードライは皮脂分泌を活性化させ、その一部は過酸化脂質へと変化します。酸化はコラーゲンの分解や架橋形成、炎症反応にもつながり、しわ、たるみ、しみの原因となり、皮膚老化の一番の原因とも言われています。DPPHラジカルの消去作用によって抗酸化活性の指標とすることができます。低分子金魚花グルクロニドは皮脂の酸化を防ぎ、紫外線暴露により生じるROSを消去することにより光老化抑制効果が期待できます。
11. 有効性情報と期待される効果
有効性情報
・ストレス時HAS3低下抑制
・高浸透性
・ラジカル消去
・過酸化脂質生成抑制
・スーパーオキシド消去
・COX2/PGE2炎症因子抑制※
・アレルギー抑制※
期待される効果
・ストレスによる乾燥肌の改善
・保湿
・抗掻痒(抗かゆみ)
・抗炎症
・創傷治癒
・抗酸化
・抗光老化
※文献情報
12. 製品情報
<原料情報>
・無農薬栽培の主に千葉県産の金魚草の花を使用
・表示名称:キンギョソウ花エキス(新規名称)
・INCI名: Antirrhinum Majus Flower Extract
・中文名称:なし
<安全性情報>
・24時間閉塞パッチテスト:刺激性なし
・SIRC細胞を用いた眼刺激性試験:刺激性なし
・ROSアッセイによる光毒性試験:陰性
13. ストレス関連の情報
<ストレス応答とは>
外界のストレッサーに対して、生体が急性ストレス応答を示し、ストレスホルモンであるコルチゾールが分泌されます。コルチゾールは血圧上昇、炎症抑制などの作用を示し、その後、ネガティブフィードバックによりストレス刺激は緩和されます。さらなるストレッサーにより急性ストレスが持続すると、抵抗期(ストレッサーと抵抗力が一定のバランス)に入り、生体防衛反応は完成します。しかし、さらなるストレッサーによりストレスが持続すると、ホメオスタシスが崩壊し、ストレス障害となります。
<コルチゾールとは>
コルチゾールは副腎皮質ホルモンであるグルココルチコイドの一種で、ストレスとの関連でもっともよく研究されている物質です。コルチゾールは代謝系、免疫系、血管系、中枢系にも影響を与え、心理的・身体的な健康状態を考えるうえで重要なホルモンです。心理的・身体的な急性ストレスに対して増加を示しますが、慢性ストレスとの関連も報告されています。朝はコルチゾール濃度が高く、とくに起床後30-60分後に急激に増加することが報告されていますが、慢性ストレスや長期的ストレスを体験している人ではこの上昇の割合が大きいことが報告されています15)。
<皮膚菲薄化に関わる外因性および内因性ステロイドホルモン>
体内で生産されるステロイドホルモンを化学合成して効果を強めたものが、外用薬のステロイドホルモンです。ステロイドは、強力な抗炎症作用、細胞増殖抑制作用、免疫抑制作用を有する薬剤として、炎症、リウマチ、そしてアトピー性皮膚炎など多くの疾患の治療に使用されていますが、長期的な使用によって副作用が生じます。
ステロイドが皮膚に与える副作用には、皮膚萎縮、皮膚線条、紫斑などがあり、長期にわたって使用していると、皮膚の菲薄化を引き起こします。菲薄化は透過性とTEWLを上昇させ、皮膚の乾燥も引き起こします。一方、皮膚委縮や菲薄化は老化に伴う生理的プロセスでもあります。
<皮膚とストレスホルモンに関する情報>
・コルチゾールを分泌する視床下部-下垂体-副腎系(HPA)は皮膚にも存在し、
ケラチノサイトにもHPA関連の全ての主要成分が見られる16)
・11β-HSD1はケラチノサイトの小胞体内腔に存在する17)
・11β-HSD1は皮膚の創傷治癒の遅れ、ケラチノサイトと線維芽細胞の増殖阻害に関与18-21)
・11β-HSD1はUV照射下で増加し、TEWLと相関22)
・UVBは11β-HSD1遺伝子とタンパク質発現を増加、UVBとUVCはコルチゾール生産を増大、UVAは影響なし23)
※11β-HSD1:不活性型コルチゾンを活性型コルチゾールに変換する酵素
<心理的ストレスが皮膚へ与える影響 -ヒト試験->
心理的ストレスのヒト試験(セロトニン阻害剤+睡眠不足)においては、皮膚のバリア機能、表皮ステロイドホルモン、その代謝酵素に与える影響を調べた論文(20歳男性25人)が報告されています3)。
そこでは以下の結果から、ストレスが内因性コルチゾールを増加させ、乾燥肌を惹起することが示唆されています。
心理的ストレス群では、
①TEWL上昇
②角層中のコルチゾールの上昇
③11β-HSD1酵素のmRNAとタンパク質レベルの上昇
④表皮ケラチノサイトと口腔粘膜のコルチゾール量に正の相関関係
⑤UV照射により11β-HSD1が活性化する
また、ストレスによる肌への影響は、乾燥だけでなく、脂性肌、ニキビや掻痒といった諸症状に関連することも報告されています24)。
つまり、ストレスがインナードライ肌の原因の一つであるといえます。インナードライとは、角質層の水分量が低下し、皮脂が過剰に分泌されている肌状態のことです。
14. 参考文献
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4) Choi EH et al. J Invest Dermatol. 124 587–595 (2005)
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Apigenin significantly reduced the both apoptotic index and TGF-beta intensity
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