黒ナマコエキス
海の黒いコラーゲン塊
~黒ナマコエキス~2019.07.03
世界最高級の青森県産黒ナマコ
規格外ナマコにも有効成分は豊富
その抽出物は高純度ヒアルロン酸に匹敵する保水力
マリン系の保湿アンチエイジング原料
1. ナマコとは
棘皮動物門ナマコ綱に属する海生の動物の総称、マナマコの学名「Apostichopus japonicus Selenka ※諸説あり」、英語でsea cucumber
世界で1,500種類、日本だけでも200種類位のナマコがいるといわれています。日本や中国で一般的に食されるナマコはマナマコという種類になります。ナマコと人々の関わりは深く、日本最古の歴史書である『古事記』に登場し、江戸時代の食材図鑑『本朝食鑑』にも記載されるなど、古くから利用されてきました1)。
ナマコは食用以外に滋養強壮薬や皮膚病の漢方薬としても用いられてきました。中国語でナマコを指す「海参(ハイシェン)」は、その強壮作用から「海の朝鮮人参」の意味でつけられた名前です。また、マレーシアでは火傷や肌荒れなどの肌の再生に効く万能薬として、ナマコを使った石鹸やクリームが利用されてきました。
近年ではナマコが持つサポニンに抗真菌効果があることがわかり、医薬品に使用されています。その他にも抗がん作用や抗アレルギー作用、生活習慣病への作用が研究されています2,3)。 また、ナマコのタンパク質の大部分はコラーゲンからなり、さらにセレブロシド(糖セラミド)も多く含まれることから化粧品素材として注目されています4) 。
<参考文献>
1) 日高敏高 日本動物大百科 第7巻 無脊椎動物 平凡社 (1997)
2) 青森県ふるさと食品研究センター 研究報告 第6号 (2009)
マナマコ抽出物の食品機能 ―抗腫瘍活性およびレクチン活性―
3) 広島県総合技術研究保健環境センター研究報告No.15 (2007)
ナマコに含まれる抗アレルギー活性成分の探索
4) Jia Z et al. J Oleo Sci. 64 1 51-60 (2015)
High throughput analysis of cerebrosides from the sea cucumber Pearsonothria graeffei
by liquid chromatography-quadrupole-time-of-flight mass spectrometry.
黒ナマコとは
日本でも高級品のナマコですが、中国では「黒いダイヤ」と称されており、中華料理の高級食材として大変珍重されています。中国の経済成長に伴い需要が急増し、ここ10年ぐらいの間にナマコ人気が急速に拡大しました。とくに日本北方の乾燥ナマコは、品質の良さから最高級のトップブランドとしての地位を保ち続けています。
このような背景から、国内では商品価値は高くなかった黒ナマコも、近年需要が高まってきており、重要な有用資源として扱われるようになってきました。そのなかで、出荷規格に該当しないため廃棄処分されるナマコも増加しており、その廃棄コストも無視できない状況となってきました。そこで、規格外黒ナマコを有効活用するために、黒ナマコエキスの化粧品原料を開発しました。
青森県は水産資源に恵まれており、なかでも陸奥湾はナマコの産地として有名で、その漁獲量は全国第2位を誇っています。青森県がナマコの産地として優れている要因が2つあります。
■地形的要因
内湾性砂泥地 クロナマコは内湾の砂泥底を好んで生息する。青森県の陸奥湾は閉鎖度が高く八甲田山系や恐山山地から流れ込んだ栄養が溜まりやすく、クロナマコが育成するのに適した海底土壌である。
■環境的要因
ナマコは海水温が高くなると運動や摂餌活動を停止し夏眠(生物が夏季の暑さや乾燥を避けて休眠して過ごすこと)するが、その状態下ではナマコの体重が減少する。一方、水温の低い北の地域では夏眠時間が短くなることから、北方で育つナマコは身がしっかりした品質の良いものに成長する。
このように、青森県の自然環境がナマコの育成環境として非常に適しているため、青森県産黒ナマコは最高級ランクと評されています。
2. 有効性情報と期待される効果
有効性情報
・水分蒸散抑制
・エラスターゼ阻害
・コラーゲン産生促進
期待される効果
・保湿
・しわたるみ改善
・抗光老化
3. 黒ナマコエキスに含まれるセラミド -TLC-
黒ナマコエキスから脂質画分を調製しTLCで分析したところ、セラミド(セレブロシド)が検出されました。
セレブロシドはヒト角層に含まれるセラミド、いわゆるヒト型セラミドとは構造が異なるものの、
皮膚への塗布により紫外線による皮膚光老化を防ぐ効果が報告されています5) 。
ナマコセラミドは植物性セラミドとは構造が異なる特徴的な分子種をもつことが分かっています4)。
<参考文献>
5) Shimada E et al. J Oleo Sci. 60 321-5 (2011)
Inhibitory effect of topical maize glucosylceramide on skin photoaging in UVA-irradiated hairless mice
4. 黒ナマコエキスの保湿作用 -in vitro-
<試験方法>
試験品:
①水
②高純度ヒアルロン酸水溶液(ヒアルロン酸を0.1%含有 ※分子量約200万)
③黒ナマコ抽出液(固形分を0.3%含有する試験品)
※試験時防腐のためすべてメチルパラベン0.15%含有
各サンプルをバイアル瓶に10mlずつ分注。
恒温器(52℃、湿度30%)に静置して20日目の重量を測定
<結果と考察>
黒ナマコ抽出液の保湿効果を確認するために、乾燥条件下での水分蒸散率を測定しました。その結果、含有固形分量に多少の差はあるものの、黒ナマコ抽出液はヒアルロン酸水溶液よりも効果的に水分の蒸散を抑制しました。このことから、黒ナマココエキスは高い保湿作用を有することが期待できます。
肌が乾燥するとバリア機能が低下し、肌荒れや老化の原因になります。そのため、若々しい肌を保つためには肌の保湿が重要になります。
5. 黒ナマコエキスの抗しわ作用 -in vitro-
<試験方法>
エラスチンを分解するエラスターゼ酵素活性に対する阻害効果を測定
試験濃度:1, 10, 100μg/mL
<結果と考察>
黒ナマコエキスはエラスターゼ活性を低濃度で阻害しました。
エラスチンは網目状に構成されるコラーゲンを結びつけ、コラーゲンとともに肌のハリを維持しています。別名、「弾力繊維」と呼ばれ、ゴムのように伸縮します。そのため、加齢や紫外線、活性酸素、ストレス、エラスチン分解酵素(エラスターゼ)などによってエラスチンが減少すると、シワやたるみなど老化の原因となります。このことから、エラスターゼを阻害する成分には、肌のハリを回復または維持させ、その結果肌を若々しく保たせる効果が期待できます。
6. 黒ナマコエキスのコラーゲン産生促進作用 -真皮線維芽細胞-
<試験方法>
真皮線維芽細胞を24時間培養。その後、黒ナマコエキス含有EMEMを加え24時間培養し、ELISAで定量
試験濃度:1μg/mL
<結果と考察>
黒ナマコエキスは線維芽細胞のコラーゲン産生量を増加させました。これにより、皮膚のしわ・たるみの改善が期待できます。
7. 製品情報
原料情報
・青森県産黒ナマコ(マナマコ)
・表示名称:ナマコエキス
・INCI名: Sea Cucumber Extract
・中文名称:なし
安全性情報
・24時間閉塞パッチテスト:刺激性なし
・SIRC細胞を用いた眼刺激性試験:刺激性なし
・ROSアッセイによる光毒性試験:陰性