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クワンソウ花エキス

 
沖縄伝統「眠り草」のサーカディアンリズム調節様作用に着目
日中防御遺伝子を活性化することで肌の保湿・バリア機能アップ

FGP  ~ クワンソウ花エキス ~2019.04.18

✔︎ 古くから快眠やリラックス効果をもつことで知られる「眠り草」クワンソウ
✔︎ 有効成分アミノ酸誘導体オキシピナタニンの「サーカディアンリズム」調節様作用に着目
✔︎ 夜間リズムの整えは日中リズムの整え
✔︎ クワンソウ花エキスが日中防御遺伝子フィラグリンの発現を強く誘導することを発見
✔︎ 加齢やストレスで低下する肌の日中保湿バリア能を高めツヤも改善


 目 次

  • 1. 期待される効果と有効性情報

  • 2. 眠り草「クワンソウ」

  • 3. サーカディアンリズムと肌

  • 4. クワンソウ花エキスはフィラグリン遺伝子の発現を促進

  • 5. クワンソウ花エキスのツヤ改善作用

  • 6. クワンソウ花エキスの保湿作用

  • 7. クワンソウ花の抗酸化成分と抗酸化能

  • 8. 原料情報


  • 1. 期待される効果と有効性情報

    期待される効果

    保湿・バリア キメ 敏感肌 抗酸化

    有効性情報

    ■保湿・バリア・キメ・敏感肌
    NMF産生(FLG生成促進)
    ツヤ(臨床試験)

    ■抗酸化
    活性酸素消去(O2-ラジカル)
    活性酸素消去(OHラジカル)
    皮脂酸化抑制(過酸化脂質)


     

    2. 眠り草「クワンソウ」

    2.1 クワンソウとは

    ススキノキ科ワスレグサ属(APG分類)
    学名:Hemerocallis fulva var. sempervirens、
    和名:アキノワスレグサ(秋の忘れ草)、英名:daylily
    沖縄県の指定した沖縄伝統野菜28品目の1つです。別名トキワカンゾウ、本州では近縁種のノカンゾウとして知られていて、沖縄ではカンゾウがなまってクワンソウになったともいわれています。

    ノカンゾウは日本の野生原種の和ハーブの一つになっています。忘れ草は、「美しい花を見ていると憂いを忘れてしまう」という故事に由来し、万葉集などにも歌われています。
    ※出典:和ハーブ図鑑 (2017)
    花、葉、茎、根の全草が有用で、蕾は中国では「金針菜」と呼ばれる高級食材です。

    琉球食療法の指導書「御膳本草」には、「眠れないとき、憂うつなときに食す」と記載されています。沖縄・八重山諸島では「ニーブイグサ」と呼ばれ、「ニーブイ」は方言で「眠り」を意味する言葉で、直訳すると「眠り草」になります。

    煎じて服用するとリラックス効果があると言われ、安眠が得られることを昔の人々は知っていました。これはオキシピナタニンというアミノ酸誘導体の効果であることが分かってきており、睡眠調整成分として研究されています。

    【用語説明】
    ・沖縄伝統野菜:①現在の食生活に定着しており、②郷土料理に利用され、③沖縄の気候・風土に適合している、という3つの条件を満たす農産物のこと。他にゴーヤーや島ニンジン、紅芋などがある
    ・御膳本草:医師で本草学者渡嘉敷通寛が1832年に著した沖縄唯一の本草書。本草学(ほんぞうがく)とは、中国で発達した医薬に関する学問です。沖縄の養生食は中国の食療養生思想の影響を強く受けています。沖縄産あるいは沖縄で手に入る食材を16項目に分類し、308品目を取り上げています。


    2.2 クワンソウ花に含まれるサーカディアンリズム調節様物質

    クワンソウ花エキスには、眠り成分として知られるオキシピナタニンとピナタニンの配糖体が多く含まれていました。また、それらのアグリコンの存在も確認されました。

    オキシピナタニンはグルタミン酸にフルフリル基が結合した構造で、ピナタニンはオキシピナタニンのフラン環が開裂した構造です。
     

    植物中のオキシピナタニンは主に配糖体であるクワンソニンとして存在し、糖部のフラクトピラノースの1位がアミノ結合した非常に珍しい構造であることが分かっています。他にロンギツバニンA(MW228)などの関連物質も検出されています。

    クワンソウではグルタミン酸がオキシピナタニンへと変換され、植物体内に大量に蓄積されています。

    参考)
    ・N-glycosides of amino acid amides from Hemerocallis fulva var. sempervirens.
      Ogawa Y Konishi T. Chem Pharm Bull (Tokyo). 57 1110-2 (2009)
    ・天然有機化合物討論会講演要旨集 51巻 617-622 (2009)

    眠り草として知られ夜間睡眠を促す効果があるとされるクワンソウのオキシピナタニン。このオキシピナタニンには、ある種のサーカディアンリズム調節機能(時計遺伝子制御機能)があるといえます。
     

    3. サーカディアンリズムと肌

    3.1 サーカディアンリズムとは

    「朝目覚め、昼活動し、夜寝る」。
    人類が地球で生き延びるために長い年月をかけて獲得してきもの、それが体内時計です。
    朝日を浴びるとセロトニンやコルチゾールが作り出されて体は覚醒し、夜には「睡眠ホルモン」メラトニンへと変換されて自然な眠りへと誘われます。
     

     
    しかし人工光の氾濫した現代社会のライフスタイルにおいては、地球の自転による昼夜と体内時計との間で不一致が生じ、体に様々なストレスがかかっているのが現状です。食事によるカロリーの過剰摂取や摂取時間の乱れも体内時計の乱れの要因となります。とくに朝食はサーカディアンリズムの同調因子として重要であるとの報告があります。

    サーカディアンリズム(概日リズム)の乱れは、集中力の欠如、肌荒れ、疲労などの様々な体調不良として実感されます。加齢も生体リズムを変化させますが、加齢で最も大きく変化するのがサーカディアンリズムとされています。サーカディアンリズムの変化が加齢をさらに加速させる要因にもなっています。

    体内時計を制御しているのは、細胞に存在する「時計遺伝子(Clock gene)」です。Clock, Bmal1, Period, Cryptochromeなどの時計遺伝子がよく知られています。これらの時計遺伝子は皮膚細胞、つまり表皮角化細胞と真皮線維芽細胞にも存在します。そこでは、個々の細胞が自律的に時を刻んでいます。

    皮脂分泌、血流、皮膚温度、細胞増殖、ターンオーバー、掻痒、創傷治癒、さらにはバリア機能といった皮膚の様々な生理機能は、末梢時計によって制御されています。
     

    図:The Impact of the Circadian Clock on Skin Physiology and Cancer Development
    J E Lubov et al. Int J Mol Sci. 22(11) 6112 (2021)より引用

     
    夜間のストレスが体内時計をより狂いやすくさせることが報告されています。サーカディアンリズムは文字通り毎日の周期的な生体リズムです。夜間のリズムが整うということは、すなわち日中のリズムが整うということでもあります。
     

     
    睡眠誘導効果をもつとしてサーカディアンリズム調節様作用が期待できるクワンソウには、日中の活動時間における皮膚細胞においても生体リズムを正常化・活性化することも期待できます。

    参考)
    Entrainment of the mouse circadian clock by sub-acute physical and psychological stress
    Yu Tahara et al. Scientific Reports. 5 11417 (2015)


     


    3.2 サーカディアンリズムと日中防御遺伝子フィラグリン

    例えば、皮膚のバリア機能と保湿に関わるフィラグリンというタンパク質を作り出す遺伝子の発現量が、日中に高まり夜には低下することが報告されています。フィラグリンは「日中防御遺伝子」として、日中の活動時間に保湿機能が高まるようにサーカディアンリズムが制御されていることになります。

    このことから、表皮細胞のフィラグリン遺伝子の発現量を高めることができれば、加齢やストレス下におけるサーカディアンリズムの狂いで生じる皮膚のバリア・保湿機能の低下を補うことができると考えられます。

    沖縄の強い太陽光の下でも凛とした大きな花を咲かせるクワンソウの花。サーカディアンリズム調節様作用をもつこの花であれば、肌の日中防御遺伝子を活性化できるのではと考えました。

    参考)
    ・The circadian clock and diseases of the skin. J Duan et al. FEBS Lett. 595 19 2413-2436 (2021).
    ・Development of an Aged Full-Thickness Skin Model Using Flexible Skin-on-a-Chip Subjected to Mechanical Stimulus Reflecting the Circadian Rhythm. S Jeong et al. Int J Mol Sci. 22 12788 (2021)
    ・資生堂プレスリリース(2013年4月)資生堂、体内時計に着目した新スキンケア技術の開発に成功


     


    3.3 <参考情報>時計遺伝子とは

    下図は代表的な時計遺伝子のサーカディアンリズムを示しています。Bmal1は夜間に、Per1は日中に発現量が高まっていることが分かります。

    データ引用・一部改変)
    Circadian Expression of Clock Genes in Human Oral Mucosa and Skin: Association with Specific Cell-Cycle Phases
    G A.Bjarnason et al. Am J Pathol. 158 5 1793-1801 (2001)


     

     
    ほ乳類の時計遺伝子は1997年にマウスの視交叉上核の細胞から初めて発見され、Clock(クロック)と名付けられました。現在までに、十数個の時計遺伝子が見つかっています。

    図に示したBmal1という時計遺伝子は、体内時計が自律的に振動するために必須な転写因子であり、哺乳類で広く保存されています。これがなくなると体内時計が止まってしまうほど重篤な症状を示すといわれています。

    特に重要なの4つの時計遺伝子のうち、ClockとBmal1がタンパク質合成の促進に、PerとCryが抑制に関わるといわれています。
     

    4. クワンソウ花エキスはフィラグリン遺伝子の発現を促進

    <試験方法>
    表皮角化細胞を24時間培養。クワンソウ花エキス含有EMEMを加え48時間培養。RNAを抽出、cDNA合成、PCR
    試験濃度: 2.6 (μg/mL)  **P<0.01

     
    クワンソウ花エキスは表皮角化細胞のフィラグリン遺伝子の発現量を有意に増加させました。その発現誘導効果はコントロールに対して約2.8倍と高いものでした。

    フィラグリンは皮膚のバリア機能(雑菌の侵入や肌内部からの水分蒸散を防ぐ機能)や潤いを保持する保湿機能に関わる重要なタンパク質です。フィラグリンは人が持つ保湿成分である天然保湿因子(Natural moisturizing factor:NMF)の元となり、肌の代謝と共に分解されてアミノ酸となり、NMFとして角層水分を保持します。

    フィラグリンは「日中防御遺伝子」として昼間の活動時間中の肌の保湿に重要な役割をもつことも分かっています。加齢により、フィラグリン発現はベーシックに低下していきます。さらに活動時間中に曝される様々なストレスもフィラグリン低下の原因となることが分かっています。

    沖縄で太陽のような鮮やかなオレンジ色の花を咲かせるクワンソウ。その花は心を癒し安定させ、昔から今でもストレス社会の重要アイテムとされています。

    眠り草といわれるクワンソウ花から抽出されたエキスには、日中時計遺伝子フィラグリンの発現促進効果をもつことが初めて明らかになりました。本原料には、いわばサーカディアンリズム調節作用が期待できます。
     

    5. クワンソウ花エキスのツヤ改善作用(臨床試験)

    クワンソウ花エキスによる肌の艶(ツヤ)改善効果を評価しました。上腕内側部にエキスとプラセボ(エキスと同じ溶媒)を塗布し、塗布前と比較しました。
    測定器:グロッシーメーター(GL200、インテグラル社)
    測定モード:With DSC (Diffuse Scattering Correction, 拡散散乱補正)※皮膚表面の凹凸や皮膚色などの影響を除いた値
    被験女性3名
    b (vs a) p<0.001, c (vs a) P<0.01, y (vs x) P<0.001, ** P<0.01, ***P<0.001

     

     
    クワンソウ花エキスは、塗布直後から顕著な肌ツヤの改善効果を発揮しました。その効果はプラセボよりも高く、エキスに含まれる溶媒以外のツヤ改善成分の効果によるものと考えられます。

    肌のツヤとは、「表皮の状態を反映した光の反射による肌の見え方」のことで、肌の透明感とも大きな関係があります。肌のツヤに影響を与えているのは、肌理(キメ)と角質層の潤い状態です。肌が潤ってキメが整うと、ツヤのある肌になります。
     

    6. クワンソウ花エキスの保湿作用

    <短期連用保湿試験>
    上腕内側部にコントロール(同一溶媒)とクワンソウ花エキスを1週間連用塗布し、Corneometerで水分量を測定しました。
     

     
    その結果、コントロールではほとんど変化しなかったのに対し、クワンソウ花エキスでは塗布前に対して有意(P<0.05)な水分量の上昇が見られました。

    7. クワンソウ花の抗酸化成分と抗酸化能

    7.1 クワンソウ花エキスのポリフェノール成分

     
    クワンソウ花エキスにはクロロゲン酸やルチン、ケンフェロール配糖体などのポリフェノールが検出されました。

    クロロゲン酸もルチンもジフェニル型のカテコール構造を有していることから、ラジカル捕捉能力が高いと考えられます。

    クロロゲン酸はチロシナーゼ活性を阻害することによりメラニン産生を抑制することが報告されています※1)
    一般に、ルチンのようにC2-C3が二重結合をもつカテコール分子は、炎症性酵素COX-2の阻害作用をもつといわれています。また、ルチンには血管修復や毛細血管強化能が知られています※2)

    参考)
    1) Effect of chlorogenic acid on melanogenesis of B16 melanoma cells.
      Li HR et al. Molecules. 19 12940-8 (2014)
    2) Rutin protects endothelial dysfunction by disturbing Nox4 and ROS-sensitive NLRP3 inflammasome.
      Wang W et al. Biomed Pharmacother. 86 32-40 (2017)


    7.2 クワンソウ花エキスの抗酸化能

    <試験方法>
    ラジカル消去試験:DPPHラジカルの消去能を測定 試験濃度:10 μg/mL
    過酸化脂質生成抑制試験:リノール酸が酸化してできる共役ジエンを測定 試験濃度:1 μg/mL
    スーパーオキシド消去試験:キサンチン/キサンチンオキシダーゼ系により生じるO2-を測定 試験濃度:8 μg/mL

     
    クワンソウ花エキスは、ラジカル消去活性、過酸化脂質生成抑制活性、スーパーオキシド消去活性を示しました。3つの活性において、10ppm以下という低濃度で効果が見られたことから、クワンソウ花エキスは強い抗酸化性を有することが分かりました。これは豊富に含まれるポリフェノールに起因していると考えられます。このことから、紫外線暴露により生じるROSを消去することにより光老化抑制効果が期待できます。また、過酸化脂質の生成を抑制することにより、皮膚のターンオーバーを改善する効果も期待できます。

    8. 原料情報

    ■原料情報
    ・沖縄県今帰仁で無農薬栽培されたクワンソウの花
    ・表示名称:ホンカンゾウ花エキス
    ・INCI: HEMEROCALLIS FULVA FLOWER EXTRACT
    ・中文名称:萱草(HEMEROCALLIS FULVA)花提取物

    ■生産者
    沖縄県本島北部の国頭郡今帰仁(なきじん)村にある、農業生産法人「株式会社今帰仁ざまみファーム」で栽培されたクワンソウの花を使用しています。同ファームは沖縄本島で一番のクワンソウ農園で、安心で安全、高品質なものを提供するため、無農薬栽培と一次加工までを実践しています。また、古くから伝わる沖縄のクワンソウの食文化を守りつづけるために、葉は生茶として、花は茶やジュレなどとして、様々な加工食品開発しています。

    ■安全性情報
    ・24時間閉塞パッチテスト:刺激性なし
    ・SIRC細胞を用いた眼刺激性試験:刺激性なし
    ・ROSアッセイによる光毒性試験:陰性



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