透明花酵母エキス
北海道大雪に咲く神秘な透明花からの新規花蜜酵母
~ 透明花酵母エキス ~2019.04.05
細胞の隅々まで水分を染み渡らせ透明になるサンカヨウの花
そこに共生する花蜜酵母メチニコビアの力を引き出す
NMF様保湿作用・くすみ改善・美白作用が肌を美透白に導きます
1. 透明花サンカヨウと花蜜酵母
透明花サンカヨウ
メギ科サンカヨウ属で、学名「Diphylleia grayi」
サンカヨウは漢字では山荷葉と書き、山に生え葉がハス(荷葉)に似ていることが由来です。長雨が降り続けると花が透明になり、ガラス細工のように神秘的な姿となります。透明になる花として最も有名な植物です。
サンカヨウ属は全世界でわずか三種(日本、中国、アメリカ)しか知られておらず、さらに高山の一部にしか生息していません。日本では北海道・北アルプスなど涼しい地域でみられる希少な野生植物です。そのため、自然保護の観点から、今回植物本体ではなく、花酵母を活用した原料開発をおこないました。
※酵母採取においては、自然公園の採取禁止事項(北海道HP/道立自然公園指定植物についてのページより)を遵守
サンカヨウ花蜜酵母
学名「Metschnikowia (メチニコビア or メトスクニコウィア)」※業界初
北海道大雪山の山麓で採取した、サンカヨウの花から単離された酵母。花蜜酵母として知られ、植物と送粉者と共生ネットワークを形成していることから注目されています。つまり、花粉からはたっぷりと糖分をもらう代わりに、昆虫などの送粉者を特有の香りで誘引して子孫分散に貢献しています。他の微生物の繁殖を抑制したり、特有のフレーバーを生産することからワイン醸造では重要な菌種となっています。
このように当社では、「人と地球をもっと綺麗に、ずっと綺麗に」をミッションに、植物を独特に活用した化粧品の製品開発を行っています。
サンカヨウ花から単離された酵母
2. ATG技術によるアミノ酸の増量化 -LC-MS-
オートファジー(ATG)技術により、アミノ酸量が大きく増加しました。
バリンとアルギニンのほか、必須アミノ酸のリシンが非常に多く含まれるのが特長です。
これらのアミノ酸はNMF様作用により保湿効果が期待できます。また、塩基性アミノ酸であるアルギニンやリシンは角層タンパク質のカルボニル化や糖化を防ぐことから、肌の老化抑制効果が期待できます。
酵母は老廃物や老化した細胞を分解することによって低分子化して新陳代謝に再利用する能力をもち、このことをオートファジー(ATG)と呼びます。オートファジーは、2016年ノーベル生理学・医学賞(大隅良典先生が受賞)により有名になった生命現象です。
3. 有効性情報と期待される効果
有効性情報
・肌水分持続
・ツヤ
・メラノサイト刺激抑制
・チロシナーゼ阻害
・メラニン貯留抑制
・抗カルボニル化
・抗糖化
・コラーゲン産生促進
・ヒアルロン酸産生促進
期待される効果
・抗カルボニル化による
くすみ改善・透明感向上
・美白
・ツヤ・キメ
・保湿
・しわ・たるみ改善
4. 透明花酵母エキスの保湿・ツヤ改善作用 -臨床試験-
<保湿>
恒温恒湿室で試験環境に肌馴化後、測定部位に被験品を塗布し、所定時間毎に角層水分量を測定
角層水分量:Corneometer (CM825)
透明花酵母エキスを肌に塗布すると、水分量が大きく増加しました。
その後は徐々に低下していきますが、6時間経過後も無塗布よりも高い水分量を示しました。
<ツヤ>
透明花酵母エキスによる肌の艶(ツヤ)改善効果を評価しました。上腕内側部にエキスとプラセボ(エキスと同じ溶媒)を塗布し、塗布前と比較しました。
測定器:グロッシーメーター(GL200、インテグラル社)
測定モード:With DSC (Diffuse Scattering Correction, 拡散散乱補正)※皮膚表面の凹凸や皮膚色などの影響を除いた値
被験女性3名
b (vs a) p<0.001, c (vs a) P<0.05, y (vs x) P<0.001, **P<0.01, ***P<0.001
透明花酵母エキスは、塗布直後から顕著な肌ツヤの改善効果を発揮しました。その効果はプラセボよりも有意に高かったことから、溶媒以外のエキス含有成分の効果によるものと考えられます。
肌のツヤとは、「表皮の状態を反映した光の反射による肌の見え方」のことで、肌の透明感とも大きな関係があります。肌のツヤに影響を与えているのは、肌理(キメ)と角質層の潤い状態です。肌が潤ってキメが整うと、ツヤのある肌になります。
5. 透明花酵母エキスの美白作用 -B16メラノーマ細胞-
<試験方法>
B16メラノーマ細胞を24時間培養。透明花酵母エキス含有DMEMを加え48時間培養後、RNA抽出よびcDNA合成。cDNAを用いてRT-qPCR。試験濃度:140μg/mL
<遺伝子の特徴>
MC1R(Melanocortin 1 receptor: メラノコルチン1受容体)
色素細胞刺激ホルモンであるαMSH(α-Melanocyte-stimulating hormone: α-メラノサイト刺激ホルモン)の受容体。紫外線などの刺激により表皮細胞から過剰にαMSHが分泌され、色素細胞表面にあるMc1rと結合することでメラニン産生が誘導されます。メラニン産生が過剰に誘導されるとシミの原因となります。
TYR(Tyrosinase: チロシナーゼ)
メラニン産生に必須の酵素。紫外線などの影響で活性化し、色素細胞中でチロシンというアミノ酸から段階を経てメラニンになる際に作用します。シミなど色素沈着のある肌で活性化しています。
<結果と考察>
B16細胞において、透明花酵母エキスはチロシナーゼ遺伝子の発現を抑制しました。
チロシナーゼはメラニン合成の律速酵素です。
また、メラニン産生刺激ホルモンのレセプターの発現を抑制することで、メラニン産生を抑制します。
6. 透明花酵母エキスの抗炎症関連の美白作用 -ヒト表皮角化細胞-
<試験方法>
ヒト表皮角化細胞を24時間培養。透明花酵母エキス含有DMEMを加え48時間培養後、RNA抽出よびcDNA合成。cDNAを用いてRT-qPCR
試験濃度: 140μg/mL
<遺伝子の特徴>
PAR2(Protease-activated receptor 2: プロテアーゼ活性化型受容体)
メラノサイトから表皮細胞へのメラニンの移行に関わり、表皮細胞内にメラニンを貯留させてしまうタンパク質。紫外線や炎症によって増加し、表皮細胞が過剰にメラニンを抱え込むとシミの原因となります。
<結果と考察>
透明花酵母エキスは、ヒト表皮角化細胞において、プロテアーゼ活性化型受容体(PAR2)の遺伝子発現を抑制しました。紫外線などによって発生するROSは、表皮細胞の様々な“遺伝子スイッチ”を入れ、炎症性タンパク質の産生が促進されます。また、紫外線や炎症はPAR2を増加させ、表皮細胞が過剰にメラニンを抱え込む原因となります。透明花酵母エキスには、メラニン貯留を抑制することによる美白効果が期待できます。
7. 透明花酵母エキスの抗カルボニル化・抗糖化作用
抗カルボニル化作用 -テープストリッピング法-
<試験方法>
女性の前腕屈側部からテープストリッピングにより角層を採取。次亜塩素酸ナトリウム水溶液に透明花酵母エキスを添加。そこに角層を採取したテープを37℃、18時間浸漬。その後、Fluorescein-5-Thiosemicarbazideで酸化タンパクをラベリングし、蛍光顕微鏡で撮影。三値化アプリで酸化タンパクを数値化
試験濃度:1.4, 4.2, 14μg/mL
<結果と考察>
透明花酵母エキスは、次亜塩素酸による角層タンパク質の損傷によって生じるカルボニル化タンパク質の発生を抑制しました。
透明花酵母エキスにも多く含まれるリシンには、角層の主要タンパク質であるケラチンのカルボニル化を防ぎ、肌のくすみを改善することが報告されています1)。リシンやアルギニンなどの塩基性アミノ酸が、自己犠牲的に角層タンパク質であるケラチンのカルボニル化を抑制したものと考えられます。これにより、肌のくすみ改善が期待できます。
1) 岩井ら J Soc Cosmet Chem Jp. 42 16-21 (2008)
透明花酵母エキスはリシンが多い
前述のとおり、ATG技術により透明花酵母エキスにはアミノ酸が豊富に含まれています。
そこで、一般的な産業酵母であるサッカロミセスセレビシエから同様の製法を用いてエキスを調製し、アミノ酸を比較分析しました。
その結果、透明花酵母エキスには、必須アミノ酸のリシンが6.3倍も多く含まれるという結果が示されました。酵母メチニコビアには一般的な酵母と比べてリシン産生が多いという特長があると考えられます。リシンは、アミノ基を複数もつことから塩基性側に等電点をもつ「塩基性アミノ酸」に分類されます。
(以下、文献情報)
酵母自身においては、液胞内にリシン、アルギニンなどの塩基性アミノ酸を蓄積し、N源不足時に活用することが知られています。
また、様々なストレスにより塩基性アミノ酸合成が活性化され、含量が増加することが知られています2)。
2) Almeida B. J Cell Sci. 120, 3279-88 (2007)
リシンは不足しがちな必須アミノ酸
小麦や精白米などの植物性食品のタンパク質にはリシンが少ないことが知られています。つまりパンや麺類、白米などの食品を日ごろ多く摂取する現代人にとっては、リシンは最も不足するアミノ酸成分の一つです。
抗糖化作用
リシンやアルギニンには皮膚内のタンパク質の糖化を抑制することで、肌のくすみを改善し、肌本来の透明度を保持することが期待できます。抗糖化作用には、肌の保湿力やしわの改善効果もあるとされています。
8. 透明花酵母エキスの抗老化作用 -真皮線維芽細胞-
<試験方法>
真皮線維芽細胞を24時間培養。その後、透明花酵母エキス含有DMEMを加え24時間培養。ELISAで定量
試験濃度:200μg/mL(コラーゲン)、140μg/mL(ヒアルロン酸)
<結果と考察>
透明花酵母エキスは線維芽細胞のコラーゲン産生量とヒアルロン酸産生量をそれぞれ増加させました。
真皮の乾燥重量の約70%はコラーゲンであり、これは真皮中に存在している線維芽細胞により合成されています。力学的な強度と若干の弾力性により、肌に弾力やハリを与えています。線維芽細胞の作り出す高分子ヒアルロン酸も、肌にハリを与えてしわを防ぎます。
透明花酵母エキスには、皮膚のしわ・たるみの改善効果が期待できます。
9. 花が透明になる理由
白い花弁の場合、水のない細胞間隙と細胞(水で満たされている)とでは光の屈折率が違うため、花弁に当たった太陽光(白色光)は、散乱・反射しやすく、全ての波長の可視光が散乱して白っぽく見えます。水を弾くワックス成分の少ない花弁が水に触れたり、減圧状態などの条件が重なると、花弁の細胞間隙にある気体が放出されます。この状態から水に触れたまま、気圧が常圧に戻ると細胞間隙が水で満たされます。花弁の組織の細胞間隙の気体が水に置き換わり、水をもともと含んでいた細胞と光の屈折率が等しくなるため、ガラスのように透明になると考えられます。
10. 透明花酵母エキスの美透白メカニズム
11. 製品情報
原料情報
・北海道大雪山に自生するサンカヨウの花から単離された酵母
・表示名称:メトスクニコウィアビチコラエキス
・INCI:Metschnikowia Viticola Extract
安全性情報
・24時間閉塞パッチテスト:刺激性なし
・SIRC細胞を用いた眼刺激性試験:刺激性なし
・ROSアッセイによる光毒性試験:陰性
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