低分子紫菊ルテオリン
表皮の微弱炎症を抑制してメラニン産生抑制_独自技術で高浸透化
~ 低分子紫菊ルテオリン ~2019.02.26
山形県伝統の紫菊「延命楽」から植物の力を引き出すATG技術で原料化しました。
高浸透ルテオリンによる抗炎症美白効果が期待できる化粧品原料です。
1. 紫菊とは
キク科キク属で、学名「Chrysanthemum morifolium」
山形県産の紫菊品種「延命楽」を使用しており、これは「もって菊」や「もってのほか」とも言われます。香り高くきりっとひきしまった花姿から、花言葉は「高貴」「高尚」「高潔」です。花姿は八重で、八重菊は皇室の家紋として使われてきました(菊花紋章)。香りや味、食感ともに最高の品種で、食用菊の横綱とされています。紫菊には、黄菊に多く含まれるカロテノイドがほとんど含まれないことから、その代わりとなる強力な紫外線防御物質が含まれると考えられます。
2. ATG技術とは
植物は老廃物や老化した細胞を分解することによって低分子化して新陳代謝に再利用する能力をもち、このことをオートファジー(ATG)と呼びます。オートファジーは、2016年ノーベル生理学・医学賞(大隅良典先生が受賞)により有名になった生命現象です。
紫菊の花弁に含まれるフラボノイドは一般に、ルテオリンマロニルグルコシド(MW534)、ルテオリングルコシド(MW448)あるいはアピゲニンマロニルグルコシド(MW518)などの配糖体として存在し、アグリコンはほとんど含まれません(上図左)。しかしATG技術により製造した原料(上図中央)には、低分子化アグリコンである高浸透ルテオリン(MW286)が多く含まれます。そこで本原料を、「低分子紫菊ルテオリン」と名付けました。ルテオリンは黄菊では微量なフラボノイド成分で、紫菊に特徴的に多く含まれます。
3. ルテオリンの特長
ルテオリンはフラボノイドの1種で、植物が紫外線から身を守るために産生すると考えられています。ルテオリンは配糖体やアグリコンとして、約300種の植物に含まれていることが知られています。
薬理的な作用としては、その高い抗酸化性によるものだけでなく、生体内の核内受容体に対して脂溶性のリガンドとして作用することで、様々な効果を発揮すると考えられています。
構造的な特徴として、フラボノイドB環の3’と4’に水酸基を配位した、いわゆるカテコール構造をもちます。カテコールは強い還元力をもち、強い抗酸化活性を発揮します。また、カテコールは抗炎症性転写因子であるNrf2を活性化し、その活性化は生体内酸化ストレスを制御し、解毒代謝活性を亢進することが分かっています。つまりルテオリンは、生体自身が本来持つ抗酸化防御システムを高めると考えられます。
4. 有効性情報と期待される効果
有効性情報
・ラジカル消去
・スーパーオキシド消去
・過酸化脂質生成抑制
・チロシナーゼ阻害
・炎症関連遺伝子発現抑制
・Nrf2活性化1)
・Ahrを介した解毒代謝亢進2)
・エストロゲンレセプターアゴニスト作用3)
期待される効果
・抗酸化
・抗光老化
・抗炎症
・美白
・細胞内抗酸化
・解毒
・女性ホルモン様作用
1) Liu CW et al. Free Radic Biol Med. 95 180-9 (2016)
Luteolin inhibits viral-induced inflammatory response in RAW264.7 cells via suppression of STAT1/3 dependent NF-κB and activation of HO-1.
2) Ashida H et al. Pestic Biochem Physiol. 120 14-20 (2014)
Luteolin suppresses TCDD-induced wasting syndrome in a cultured adipocyte model.
3) Puranik NV et al. Scientific Reports. 9 7450 (2019)
Determination and analysis of agonist and antagonist potential of naturally occurring flavonoids for estrogen receptor (ERα) by various parameters and molecular modelling approach.
5. メラニン産生抑制作用(チロシナーゼ阻害)
<試験方法>
チロシナーゼ活性阻害試験:メラニン合成酵素チロシナーゼに対する阻害効果を、ドーパからドーパクロームの酵素生成物の量で測定
試験濃度:40, 400μg/mL
<結果と考察>
低分子紫菊ルテオリンはチロシナーゼ活性を阻害しました。チロシナーゼはメラニン産生に必須の酵素です。紫外線などの影響で活性化し、色素細胞中でチロシンというアミノ酸から段階を経てメラニンになる際に作用します。シミなど色素沈着のある肌で活性化しています。
6. メラニン産生抑制作用(表皮角化細胞の炎症関連遺伝子)
<試験方法>
ヒト表皮角化細胞を24時間培養。その後、低分子紫菊ルテオリン含有DMEMを加え48時間培養。RNA抽出よびcDNA合成、cDNAを用いてRT-qPCR
試験濃度: 4, 20, 40, 400μg/mL t-検定: **P<0.01
<遺伝子の特徴>
IL1A(Interleukin-1α: インターロイキン-1α)
表皮細胞から産生される炎症性サイトカイン。産生されたIL-1αは色素細胞を刺激し、メラニン産生を促進します。紫外線などの影響で増加し、シミ形成の原因となります。
COX2(Cyclooxygenase-2: シクロオキシゲナーゼ-2)
炎症性エイコサノイドであるプロスタグランジンE2(Prostaglandin E2:PGE2)を産生する酵素。紫外線などの影響により表皮細胞でCOX2が増加し、PGE2が過剰に作り出されます。このPGE2が色素細胞を刺激して、メラニン産生を促進します。
EDN1(Endothelin-1: エンドセリン-1)
表皮細胞から産生されるサイトカインの1つ。紫外線などの影響により表皮細胞で作り出されたエンドセリン-1は色素細胞を刺激し、色素細胞内のチロシナーゼを活性化させメラニン産生を促進します。
SCF(Stem cell factor: 幹細胞増殖因子)
紫外線などの刺激により表皮細胞から産生され、メラノサイトを活性化させる因子。SCFの刺激を受けた色素細胞はメラニンを合成します。過剰に作り出されるとシミの原因となります。
PAR2(Protease-activated receptor-2: プロテアーゼ受容体)
メラノサイトから表皮細胞へのメラニンの移行に関わり、表皮細胞内にメラニンを貯留させてしまうタンパク質。紫外線や炎症によって増加し、表皮細胞が過剰にメラニンを抱え込むとシミの原因となります。
MIF(Macrophage migration inhibitory factor: マクロファージ遊走阻止因子)
色素細胞でのメラニン合成促進因子の産生を促進するタンパク質。紫外線などの影響により表皮細胞から分泌され、SCFやPAR-2の産生促進を介してシミ形成を促進します。
<結果と考察>
紫菊ルテオリンはヒト表皮角化細胞において、IL1A, COX2, EDN1, SCF, PAR2およびMIFの遺伝子発現を抑制しました。紫外線などによって発生するROSは表皮細胞の様々な“遺伝子スイッチ”を入れ、インターロイキン-1α(IL-1α)やマクロファージ遊走阻止因子(MIF)などのタンパク質の産生が促進されます。IL-1αは、EDN-1、SCF産生を高めることを通じてチロシナーゼ活性を高めます。MIFは表皮細胞のSCF産生を促進すると同時にプロテアーゼ受容体(PAR2)生成も高めます。メラノサイトで過剰生産されるメラニンは、表皮細胞上のPAR-を介して表皮細胞に移行し、蓄積してしまいます。紫菊ルテオリンには、これらの因子を抑制することによる美白効果が期待できます。
発現阻害率:IL1(35%, 47%, 47%), COX2(71%, 71%, 74%), EDN1(85%, 85%, 84%), SCF(32%, 30%), PAR2(31%, 23%), TYR(22%, 20%, 19%), MC1R(36%,33%, 39%)
7. メラニン産生抑制作用(B16メラノーマ細胞のメラニン合成関連遺伝子)
<試験方法>
B16メラノーマ細胞を24時間培養。柴菊ルテオリン含有DMEMを加え48時間培養後、RNA抽出よびcDNA合成。cDNAを用いてRT-qPCR。試験濃度: 4, 20, 40μg/mL t-検定: *P<0.05, **P<0.01
<遺伝子の特徴>
TYR(Tyrosinase: チロシナーゼ)
メラニン産生に必須の酵素。紫外線などの影響で活性化し、色素細胞中でチロシンというアミノ酸から段階を経てメラニンになる際に作用します。シミなど色素沈着のある肌で活性化しています。
MC1R(Melanocortin 1 receptor: メラノコルチン1受容体)
色素細胞刺激ホルモンであるαMSH(α-Melanocyte-stimulating hormone: α-メラノサイト刺激ホルモン)の受容体。紫外線などの刺激により表皮細胞から過剰にαMSHが分泌され、色素細胞表面にあるMc1rと結合することでメラニン産生が誘導されます。メラニン産生が過剰に誘導されるとシミの原因となります。
<結果と考察>
紫菊ルテオリンはメラノーマ細胞において、TYRとMC1Rの遺伝子発現を抑制しました。チロシナーゼはメラニン合成の律速酵素です。また、メラニン産生刺激ホルモンのレセプターの発現を抑制することでメラニン産生を抑制します。
発現阻害率:TYR(22%, 20%, 19%), MC1R(36%,33%, 39%)
8. 抗酸化作用
<試験方法>
ラジカル消去試験:DPPHラジカルの消去能を測定
過酸化脂質生成抑制試験:リノール酸が酸化してできる共役ジエンを測定
スーパーオキシド消去試験:キサンチン/キサンチンオキシダーゼ系により生じるO2-を測定
試験濃度:4, 40, 400μg/mL
<結果と考察>
低分子紫菊ルテオリンは、ラジカル消去作用、過酸化脂質生成抑制作用およびスーパーオキシド消去作用を示しました。
高浸透ルテオリンは皮膚の深層へと浸透し、紫外線暴露により生じるROSを消去することにより光老化抑制効果が期待できます。また、過酸化脂質の生成を抑制することにより、過脂化メラニンの産生を抑え、皮膚のターンオーバーを正常化することによる、美白効果も期待できます。
9. 製品情報
原料情報
・山形県産食用菊「延命楽」を使用
・表示名称:キク花エキス
・INCI: CHRYSANTHEMUM MORIFOLIUM FLOWER EXTRACT
・中文名称:菊(CHRYSANTHEMUM MORIFOLIUM)花提取物
安全性情報
・24時間閉塞パッチテスト:刺激性なし
・SIRC細胞を用いた眼刺激性試験:刺激性なし
・ROSアッセイによる光毒性試験:陰性
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