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ふきの芽フィトカンナビノイド~皮脂~

 
ふるさと元気プロジェクト
Beyond the Cannabis
秋田ふきの新芽で肌のエンドカンナビノイド・システムを活性化
皮脂バランスを整える

皮脂ニキビケア原料 ~ ふきの芽フィトカンナビノイド ~2023.03.03

✔ 「春の皿には苦味を盛れ」。日本人に受け継がれる健康の知恵
✔ 春一番の使者「ふきの芽」には苦味成分テルペンが一番*
✔ ふきテルペン含有エキスがCBD様作用(カンナビノイド様作用)を発揮
✔ 肌のホメオスタシス維持システムECSに働きかけることで皮脂バランスを最適化
✔ 年齢・性差・季節でゆらぐ多様な肌状態のケアが可能なユニバーサルデザイン原料

  *春山菜における含有量として(当社調べ)  ECS: エンドカンナビノイドシステム


  目 次

  • 1. 期待される効果と有効性情報

  • 2. 人体に備わる健康維持システム「エンドカンナビノイドシステム」

  • 3. 「春には苦味を盛れ」:日本人に受け継がれる健康の知恵

  • 4. 皮脂はバランスが大切

  • 5. 「ふきの芽フィトカンナビノイド」のCBD様作用(カンナビノイド様作用)

  • 6. メラニン生成を抑える

  • 7. 皮脂化粧品市場とジェンダード・イノベーション

  • 8. 秋田ふきの芽ならではの多彩なフィトケミカル

  • 9. 「ふき」に伝わる機能とフィトカンナビノイドとの共通点

  • 10. 秋田伝統の巨大な春山菜「秋田ふき」

  • 11. 原料情報

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    1. 期待される効果と有効性情報

    期待される効果

    ■皮脂(ニキビ)・毛穴・頭皮・加齢臭 シミ

    有効性情報

    ■皮脂(ニキビ)・毛穴・頭皮・加齢臭
    皮脂量調節(臨床試験)
    抗炎症(COX2生成抑制)
    抗炎症(EDN1生成抑制)
    抗炎症(PAR2生成抑制)
    抗炎症(SCF生成抑制)
    脂質酸化抑制(過酸化脂質生成抑制)
    活性酸素消去(O2-ラジカル消去)
    活性酸素消去(OHラジカル消去)

    ■シミ・そばかす  
    メラニン生成抑制(TYR生成抑制)
    メラニン生成抑制(MC1R生成抑制)       
    脂質酸化抑制(過酸化脂質生成抑制)
    活性酸素消去(O2-ラジカル消去)
    活性酸素消去(OHラジカル消去)


     

    2. 人体に備わる健康維持システム「エンドカンナビノイドシステム」

    2.1 エンドカンナビノイドシステム(ECS)とは

    私たち人間を含むすべての哺乳類は、自然に発生するエンドカンナビノイドシステム(ECS: Endocannabinoid System)を体内に持っています。ECSは太古の昔から私たちとともにあり、健康と幸福を維持する上で不可欠な役割を果たしてきました。しかし、現代医学がその存在を発見したのは比較的最近のことです。1964年、大麻草の向精神物質としてTHCが発見、その後1988年、大麻成分の脳科学的研究の過程でカンナビノイド受容体としてECSが発見されました。

    人体の恒常性(ホメオスタシス)を維持するために常に働いている仕組みがECSです。

    ECSは睡眠、体温、食欲、代謝、消化、痛み、免疫、感情、運動機能、発達と老化、神経保護、炎症、認知・記憶、ホルモンなどの調節機能をもち、身体調節機能の全体を支えるものです。

    ECSはシグナル伝達物質である内因性カンナビノイド(エンドカンナビノイド)、およびそれらの情報を受け止めるカンナビノイド受容体(CB1、CB2など)から主に構成されています。

    ・Cannabinoid pharmacology: the first 66 years. RG Pertwee. Br J Pharmacol. 147 S163–S171 (2006)


     


    2.2 皮膚のECS ~ホメオスタシス~

    皮膚にもECSは存在します(下図)。ECSを構成するカンナビノイド受容体は、表皮角化細胞、真皮線維芽細胞、メラノサイト、マスト細胞、脂腺細胞、汗腺など多くの細胞で確認されています1)。皮膚ECSはアレルギー、アトピー性皮膚炎、乾癬、痒み、ニキビ、皮脂分泌、色素沈着、あるいは発毛に関わるとされています2)。一方皮膚ECSにはまだ不明な点も多く残されており、ECSは今後の皮膚科学・美容科学の重要なターゲットとなると期待されています。
     

             図 皮膚のエンドカンナビノイドシステム

    CB1: カンナビノイド受容体タイプ1;CB2: カンナビノイド受容体タイプ2;TRPV1-4: 温度感受性受容体(温~熱);TRPA1: 温度感受性受容体(冷);TRPM8: 温度感受性受容体(冷~温);PPARγ: 核内受容体;GPR55: Gタンパク質共役型受容体
    <参考>
    ・Therapeutic potential of cannabidiol (CBD) for skin health and disorders. SM Baswan et al. Clin Cosmet Investig Dermatol. 13927–942 (2020)
    ・Cannabis and the skin. K Shao et al. Clinics in Dermatology. 39 5 784-795 (2021)
    ・Inhibition of skin tumor growth and angiogenesis in vivo by activation of cannabinoid receptors. ML Casanova et al. J Clin Invest. 111 (2003)

    しかし、エンドカンナビノイドを生成・代謝する体の能力やECSベースのシグナル伝達は、年齢とともに大幅に低下するといわれています3)。老化に加えて、外部からのストレスもECSの働きを弱め、いわゆる「カンナビノイド欠乏症」を招いてしまいます。

    その結果、増えてほしくないものは増え続け、減ってほしくないものは減り続けるといったように、皮膚のホメオスタシスは維持されなくなります。

    そのため、ECSの働きを理解して適切に肌をケアすることは、加齢の兆候や症状に悩まされている多くの人に希望を与えるものと期待されています。それを可能にする注目成分の一つが、フィトカンナビノイドである大麻草由来カンナビジオール(CBD)です。

    1) The endocannabinoid system of the skin. A potential approach for the treatment of skin disorders
     C delRío et al. Biocheml Pharmacol. 157 122-133 (2018)
    2) Cannabinoid signaling in the skin: Therapeutic potential of the “c(ut)annabinoid” system
     KF Tóth et al. Molecules. 24 918 (2019)
    3) Dynamic changes in the endocannabinoid system during the aging Process: Focus on the middle-age crisis
     P Nidadavolu et al. Int J Mol Sci. 23 10254 (2022)


    2.3 話題の大麻草CBDはECS調節成分

    CBDの有効性

     
    CBDには抗てんかん作用があることが報告されたことで、ストレス緩和や鎮静といったリラックス系の効果が期待され、これまでに多くのCBD商品が販売されています。

    CBDの外用剤としての機能には、痒み(アトピー)、バリア不全(乾癬)、炎症(皮脂・ニキビ)に対する抑制作用などが挙げられます4)。また、CBDが頭皮に有効であるとの期待から5)、CBD入りヘアケア製品がアメリカでは人気になっています。

    ECSの本質は「ホメオスタシス」にあります。例えば「皮脂」においては、脂性肌ではニキビができやすく、他方、乾燥肌では皮脂不足により乾燥が顕著であったり、その中間の混合肌もあります。皮脂は体の部位や年齢、性別、ホルモンバランスの変化によってもその表現型は多様であり、まさにECSを調節できるCBDに期待が持たれています。

    CBDの課題

     
    注目のCBDですが、その起源は大麻草(Cannabis sativa L.)に限定されます。精神活性成分THC(テトラヒドロカンナビノール)を含まないCBD製品が輸入されていますが、起源が大麻草である以上、抽出部位や製品規格には厳しい規制があります。

    また日本国内では原則栽培禁止(免許制)であり、国産原料を求めることができない「アンサステナブル」な原料ともいえます。

    中国、韓国、シンガポールなどアジア諸国ではCBDは違法物質に指定されています。香港では2023年からCBDが禁止薬物に指定されました。このように欧米での市場拡大と逆行した動きも見られます。

    CBDは単体(アイソレート)で摂取するよりも、大麻草由来の複数のフィトケミカル(未精製成分)と同時に摂取した方がより高い生理機能が見込めるとされています(アントラージュ効果)。しかし、このような未精製品にわずかでもTHCが混入してしまうと日本では取り扱うことができなくなります。実際にCBD製品からTHCが検出されて製品回収に至った事例もあります。

    国内で流通している多くのCBDアイソレートには基本的にTHCは含まれていませんが、大麻草由来原料を使うこと自体に心理的な抵抗感があるのも事実です。

    Beyond the Cannabis ―新たなフィトカンナビノイドを求めて―

     
    カンナビノイド(ECS調節分子)の分類は以下の図の通りになります。CBDやTHCは大麻草由来のフィトカンナビノイドに分類されます。

    これらの課題や、CBDの有効性発現におけるアントラージュ効果(様々なフィトケミカルによる相乗効果)の研究から、カンナビノイドではなくてもカンナビノイド様作用を発揮する植物成分が見つかってきています。大麻草以外の植物からのフィトカンナビノイド研究、すなわち「Beyond the Cannabis」が注目されています6)。
     

    4) Therapeutic potential of cannabidiol (CBD) for skin health and disorders
     SM Baswan et al. Clin Cosmet Investig Dermatol. 13 927–942 (2020)
    5) Hair regrowth with cannabidiol (CBD)-rich hemp extract – A Case series
     G Smith, John Satino Cannabis. 4 53-59 (2021)
    6) Terpenoids, cannabimimetic ligands, beyond the cannabis plant
     ECD Gonçalves et al. Molecules. 25 1567 (2020)


    2.4 カンナビノイド様物質として苦味成分「テルペン」に着目

    フィトカンナビノイドとして注目されている物質群に、「テルペン」があります。テルペンは少なく見積もっても40,000種以上もの化合物からなる天然物最大のグループとされています。

    低分子性のテルペンは植物の芳香成分であったり、苦味などの強い風味をもつ成分です。また、テルペン(テルペノイド)は抗菌、抗炎症、抗腫瘍など様々な薬理効果があることが知られています。

    フィトカンナビノイド(非カンナビノイド)として有名なβ-カリオフィレンもテルペンの仲間(セスキテルペン)です。大麻草やホップに含まれています。また、皮膚に冷涼感を与えることで知られるメントールもテルペンの仲間で、ECSの一つである温感受容体(TRPチャネル)を介して作用しています。つまりハッカ由来メントールもフィトカンナビノイドの一種です。

    我々は日本の植物から肌に有効なフィトカンナビノイドを探索研究するなかで、和食に受け継がれる日本原産のある苦味山菜に注目しました。

    テルペンの分類(C5のイソプレノイドが基本ユニット):
    2ユニットC10:モノテルペン
    3ユニットC15:セスキテルペン
    4ユニットC20:ジテルペン
    5ユニットC25:セスタテルペン
    6ユニットC30:トリテルペン(ステロイド)
    8ユニットC40:テトラテルペン(カロテノイド)
    ・β-Caryophyllene, a CB2 receptor agonist produces multiple behavioral changes relevant to anxiety and depression in mice
     A Bahi et al. Physiology & Behavior. 135 119-124 (2014)


     

    3. 「春には苦味を盛れ」:日本人に受け継がれる健康の知恵

    3.1 春一番の使者ふきの芽(フキノトウ)

    旬の野菜で健康を維持してきた日本人の知恵

     
    日本人は昔から食べ物の旬を大切にしてきました。旬を大切にする理由は味が美味しいことだけではありません。旬の食べ物は栄養価が高く、旬の時期に食べることでその時期の身体に必要な栄養素をとることができます。それにより季節特有の体の不調が改善され、健康的な生活を送れるということを昔から日本人は知っていました。

     「春は苦味、夏は酸味、秋は辛味、冬は脂と合点して食え」 石塚左玄の食物養生法より。

    春の苦味には、心・循環器を強化し、身体に溜まった余分な熱を冷まし、体内の余分な水分や老廃物を取り除く浄化作用、神経を鎮静させる作用があるとされています。
     

     

    春には苦味を盛れ。春一番の使者「ふきの芽」

     
    春山菜のなかでも「ふきの芽」は、雪溶けを待たずに凍土を破って顔を出す春一番の使者です。冬の間にお腹を空かせた野生動物に一番に狙われやすく、そのためもっとも苦味・香りが強い*という特徴があります(=外敵から身を守るため)。
    *下記8項にデータあり
     

     
    このようなクセの強い春山菜を和食の伝統技法で美味しく加工して食すことで、冬に貯まった毒素を排出し、春に舞い始める花粉から身を守ることができるといわれています。

    私たち日本人は何千年という時の中で、経験的に春の山菜の効能を知り、食文化に取り入れてきました。

    「苦味・香り」といえば春一番のふきの芽。ふきの苦味にはテルペンが強く関与しています。この日本原産のふきの芽が、フィトカンナビノイドの供給源として有効な植物であると考え開発を進めました。


    3.2 ふきの芽の苦味・芳香成分「セスキテルペンエステル」

    ふきの芽のエキスには、ポリフェノール類とセスキテルペン類が多種含まれています(下表に一部掲載)。ここで注目すべきは、フキといえば日本人研究者の発見した「ふきテルペン」です。
     

     
    ふきテルペンの属するセスキテルペン類は独特の芳香と苦味を持ちます。ふき(Petasites japonicus)固有のテルペンは、主にフキノリド(バッケノリド)とイソペタシンの2種に大別されます。これらの成分を含むふきの芽は、健胃、解熱・解毒、腫れを抑える、扁桃腺などの炎症をやわらげるといった効能があるとされています。

    ・フキ属植物のセスキテルペン類、野村正幸ら、素材物性学雑誌 22(2009)


    3.3 ふきテルペンはCBD様物質(カンナビノイド様物質)

    ふきテルペンの主成分であるイソペタシンは大麻草CBDと分子量がほぼ同じで、構造も類似しています。
     

     
    カンナビノイド受容体は皮膚にも存在し、皮膚のホメオスタシスを維持するための重要な役割を担っています。CBDは皮膚の炎症抑制に加えて、皮脂分泌を整えることからニキビなどの皮膚トラブルにも効果的です。

    我々は、ふきテルペン含有エキスが皮膚でCBD様作用(カンナビノイド様作用)を発揮するのではと考えました。ECSといえばホメオスタシス。皮膚のホメオスタシスにおいてもホルモンが重要であり、ホルモンは皮脂分泌に強い影響を与えます。とくに顔面では皮脂分泌の多少がギラツキやカサツキといった肌トラブルの顕在化に繋がります。
     

    4. 皮脂はバランスが大切

    4.1 皮脂量の変化(年齢、性差、季節)

    美容においてはシミを抑える、炎症を抑えるといった肌への様々な訴求がありますが、「皮脂」に関しては単に抑えればよいというものではありません。皮脂は毛穴の中にある皮脂腺から分泌され、汗と混じり合って肌表面に皮脂膜(バリア)を形成します。そのため、皮脂分泌は肌を守るための大切な役割を担っています。
     

    年齢

     

     
    上左図の海外女性(イタリア、胸部、94名)で調査された肌の皮脂量は、30代半ばまで増加し、その後、更年期頃から大きく減少していきます。当社が独自に調査した日本人女性326人の額の皮脂量(右図、Sebumeter、各歳平均)でも同様の傾向が示され、30歳頃をピークにそれ以降徐々に減少していきます。このことから、加齢に伴う皮脂量の低下は、成人女性の肌の乾燥に大きな影響を与えていることが分かります。また、10代前半から20代にかけての皮脂量の急激な増加は、毛穴詰まりから炎症が生じることでニキビの原因にもなります。

    *1: Effects of aging on fatty acids in skin surface lipids. MN Porro et al. J Invest Dermatol. 73 112-7 (1979)

    性差

     
    皮脂量
    皮脂は性ホルモンの影響を強く受けるため、皮脂量は男性の方が高くなります。上左図のとおり、男性(同96名)は女性と同様に20歳頃まで皮脂量が急激に増加し、その後50代半ばまでその高い皮脂量を維持していることが分かります。また女性に関しては月経周期と皮脂量が気になるところです。1991年の論文によると、月経前週と当該週に皮脂量の増加が観察されています。一方、2020年の論文(女性被験者51人)によると、月経周期は肌の水分、皮脂、pHの変化を引き起こさないと報告されていますが、より詳細で長期的な研究が必要であるとされています。はっきりと分かっていないのが現状のようです。
     

     
    毛穴
    当社独自分析により、毛穴総数と毛穴総面積において男性は女性よりも有意に高い値であることが示されました(上図)。医学的に出生後は毛穴の数は増えないと考えられており、毛穴総数の違いは生物学的性差であるといえます。毛穴のサイズは皮脂量と相関があることが分かっており、男性ホルモンの影響により皮脂量の多い男性で毛穴面積が大きくなる傾向があります。

    ・Rhythm of sebum excretion during the menstrual cycle.
     C Pierard-Franchimont et al. Dermatologica. 182 211-3 (1991)
    ・Relationship of cutaneous moisture, sebum and pH changes of healthy skin with menstrual cycle.
     N Küçükaydoğan et al. Turkderm-Turk Arch Dermatol Venereol. 54 90-5 (2020)
    ・Sebum output as a factor contributing to the size of facial pores.
     M Roh et al. Br J Dermatol. 155 (2006)

    皮脂と加齢臭

     
    分泌された皮脂は、加齢に伴う肌の抗酸化力の低下もあり過酸化脂質へと変化し、さらに臭い成分に変化しながら、いわゆる加齢臭が発生します。

    「加齢臭」と聞くと中高年男性をイメージしますが、更年期にあたる40代以降の女性においても、女性ホルモンの減少により加齢臭が発生しやすくなるといわれています。加齢臭は「皮脂の酸化」が原因です。加齢とともに皮脂量が低下するとしても、高い抗酸化作用を持つ女性ホルモン「エストロゲン」も加齢により減少してしまうことで、皮脂が酸化されやすい状態になります。

    季節

     
    日本人24人(女性12人、男性12人)で測定された皮脂量の季節変動の結果を示しました(下図、文献引用)。7月の皮脂量は1月の2倍以上を示し、年間を通して皮脂量と皮膚温には相関関係がみられます。皮脂量は春から夏にかけて急に上昇することから、この時期に多いニキビの原因となります。
     

     
    このように皮脂分泌は季節で大きく変化することから、夏は抑制的に、冬は促進的に皮脂バランスを制御することが望まれます。それにより、夏の脂っぽいベタつきや汚れの付着、メイクくずれを防ぎ、また冬のかさつきやバリア機能の低下による肌荒れなどのトラブルを回避することができます。

    皮脂量は性別(ホルモンの影響)、年齢(ホルモンの影響、女性は更年期の影響大)、季節(皮膚温)が大きな変動要因です。変動要因を意識しながら、皮脂バランスを整え、過酸化脂質の生成を抑え、黒ずみ・ニキビの原因となる炎症を抑制するといったトータルケアを施すことで、皮脂に起因する肌トラブルを改善することができます。

    ・Seasonal variations in skin temperature, skin pH, evaporative water loss and skin surface lipid values on human skin. T Abe et al. Chem Parm Bull. 28 387-392 (1980)


    4.2 「肌質」の自己診断は難しい

    肌質の分類においては水分と皮脂量を2軸としたとき、下図のような4つの肌分類があります。
     

     
    当社独自調査(肌質アンケート調査と皮脂セブテープ分析、女性平均年齢31.0歳)によると、普通肌を選択する女性は全体のわずか6%であり、多くの人(59%)が混合肌を選択しています。混合肌の皮脂量を調べると、低皮脂量から高皮脂量まで実に多様な肌質が混在し、むしろ低皮脂群が多いことが分かります。本来は普通肌であっても、ある程度の脂っぽさを気にして中間的な混合肌を選択する傾向があるのかもしれません。脂性肌と認識している人でも低皮脂量の人も相当数含まれ、逆に乾燥肌でも皮脂量の高い人が一定数含まれます。男性(平均年齢31.5歳)でもほぼ同様の傾向が見られますが、脂性肌であると感じている人の割合が18%と女性よりも高値でした。

    以上のことが意味するのは、自身の肌状態を正しく診断することは困難であるということ、肌の誤った自己診断は誤ったスキンケアに繋がる可能性が高いということです。
     


    4.3 開発の狙い:ECSのホメオスタシス維持機能で皮脂バランス調節

    フィトカンナビノイドとして最も注目される成分CBD。CBDは皮脂を作り出す皮脂腺に働きかけることで、皮脂が出過ぎているときは抑え、逆に肌が皮脂不足で乾燥しているときは皮脂の分泌を活発にするなど、皮脂量を最適化する方向でコントロールすることが可能です。これがまさにエンドカンナビノイドシステム(ECS)によるホメオスタシス維持機能です。個々で異なる肌状態や皮脂悩みの異なる年齢・性差を問わず、正しい皮脂制御が可能となります。

    新原料「ふきの芽フィトカンナビノイド」には、CBDと同じく皮膚のECSに働きかけて皮脂バランスを調節する機能があるのではと考え、以下の皮膚科学的試験を行いました。

    ・Endocannabinoids enhance lipid synthesis and apoptosis of human sebocytes via cannabinoid receptor-2-mediated signaling
     N Dobrosi et al. The FASEB Journal 22 3685-95 (2008)


     

    5. ふきの芽フィトカンナビノイドのCBD様作用(カンナビノイド様作用)

    5.1 皮脂バランスを調節する(臨床試験)

     
    エキス塗布試験開始前に初期値として皮脂測定を行い、その後毎日朝晩2回顔に塗布しました。

    皮脂の初期値が高い群においては(左図)、「ふきの芽フィトカンナビノイド」塗布により初期値に対して有意に皮脂量は低下していました。この皮脂抑制効果は、プラセボやCBD(アイソレート)よりも高いものでした。

    一方、低皮脂群においては(右図)、「ふきの芽フィトカンナビノイド」塗布により皮脂量の増加が見られました。

    本試験においては、CBDアイソレート(>99%CBD)に著効は見られませんでした。CBDは、CBGやCBNといった他のカンナビノイド、テルペンやフラボノイドなどのその他のフィトケミカルが共存することで高い効果を発揮するとされています。

    以上の臨床試験の結果を下図にまとめました。
     

     
    各棒グラフは、被験者群(高皮脂と低皮脂)の皮脂量の初期値(高皮脂群を100とする)を示しています。本原料塗布により、額と頬に共通して高皮脂群では皮脂量は低下し(緑色のバー)、低皮脂群では皮脂量は増加(緑色のバー)していました。その結果、両群の皮脂量は近いものとなっていました。

    「ふきの芽フィトカンナビノイド」に含まれるふきテルペン類が皮脂腺に働きかけ、カンナビノイド様作用を介して皮脂過多は抑制的に、皮脂過少は促進的に調節することで、肌の皮脂バランスを整えたものと考えられます。


    5.2 過酸化脂質の生成を抑える:CBDと比較

    ふきの芽フィトカンナビノイドは過酸化脂質生成抑制作用と活性酸素消去作用を示しました(下図)。
     

     
    皮脂は外界と接していることから、紫外線や酸素などの影響を受けて酸化されやすい状態にあります。皮脂成分のなかで酸化の影響を最も受けやすいものがスクワレンです。

    加齢とともに皮脂には次のような変化が起きやすくなることが知られています:①過酸化反応で生じたスクワレンモノヒドロペルオキシドが増える、②パルミトレイン酸が増える、③スクワレンモノペルオキシドによりパルミトレイン酸の酸化連鎖反応が生じ加齢臭成分2-ノネナールが増える。

    過酸化脂質は皮膚内の酸化反応を連鎖させることで、表皮や真皮にも様々な悪影響を与えることから、皮膚老化の要因となります。また、皮脂の過剰分泌により毛穴に詰まった皮脂が酸化されて過酸化脂質となり、黒ずみや炎症が生じることでニキビとなります。

    「ふきの芽フィトカンナビノイド」には、皮脂バランス調節作用に加えて、皮脂を酸化から守ることで皮膚内の酸化ストレスを軽減し、毛穴が目立たず加齢臭の少ない健全な皮脂膜の形成を助ける効果が期待できます。

    ・Skin aging and photoaging alter fatty acids composition, including 11,14,17-eicosatrienoic acid, in the epidermis of human skin.
     EJ Kim et al. J Korean Med Sci. 25 980–983 (2010)

    <試験方法>
    過酸化脂質抑制試験:リノール酸が酸化してできる共役ジエンを測定
    スーパーオキシド消去試験:キサンチンオキシダーゼ系により生じるO2-消去能を測定
    OHラジカル消去試験:過酸化水素から生じる・OHラジカル消去能を測定
    試験濃度:0.3, 3, 30 μg/mL

     
    CBDアイソレート(▲)についても同様の試験を行い、ふきの芽フィトカンナビノイド(5.2と同じデータ)と比較しました。CBDでは、ふきの芽よりも若干弱いものの過酸化脂質生成抑制作用が見られました。一方、SOD様作用(スーパーオキシド消去)はほとんど観察されませんでした。
     


    5.3 炎症遺伝子の発現を抑える

    ふきの芽フィトカンナビノイドは、表皮角化細胞の炎症関連遺伝子の発現を抑制しました(下図)。
     

     
    CBDは皮膚に存在しているECS(エンドカンナビノイドシステム)受容体に作用することで様々な効果を発揮します。CBDで最も注目されている機能の一つは「抗炎症」です。皮膚炎、ニキビ、アレルギー、アトピー、乾癬、痛み、かゆみ、裂傷、やけど等の皮膚トラブルに対して、炎症を抑えることで高い効果が期待できると考えられています。

    ふきの芽フィトカンナビノイドにより発現抑制された炎症関連遺伝子には、以下のような作用が報告されています。

    1)COX2はニキビを発症している皮膚病変で高発現している。
    2)PAR2はその名の通りプロテアーゼにより活性化される。ニキビ発症の原因菌でもあるアクネ菌はプロテアーゼを周囲に分泌する。PAR2はそのプロテアーゼに応答して活性化し、炎症誘導やニキビ悪化に強く関与する。また、花粉にも強く応答してアレルギー症状を惹起する。
    3)EDN1は皮膚の非ヒスタミン依存性の内因性掻痒物質。IL-25と協調してアトピー性皮膚炎における痒みだけでなく炎症にも関与している。
    4)サイトカインSCFはマスト細胞の受容体に結合し、マスト細胞を活性化する。活性化したマスト細胞からのヒスタミン遊離は様々なアレルギー様症状を惹起する。

    「抗炎症」「抗ニキビ」「抗掻痒」「抗AD」「抗アレルギー」は、エンドカンナビノイド調節作用をもつCBDなどのフィトカンナビノイドに期待されている機能です。これらの抗炎症系の効果は皮脂腺においても有効です。ふきの芽フィトカンナビノイドには、カンナビノイド作用として知られる抗炎症系の効果が期待できます。

    1) Immunohistochemical expression of cyclo-oxygenase 2 and liver X receptor-α in Acne vulgaris
     OA. Bakry et al. J Clin Diagn Res. 11(9) (2017)
    2) Protease-activated receptor-2 mediates the expression of inflammatory cytokines, antimicrobial peptides, and matrix metalloproteinases in keratinocytes in response to Propionibacterium acnes
     SE Lee et al. Arch Dermatol Res. 302 745–756 (2010)
    3) Mutual upregulation of endothelin-1 and IL-25 in atopic dermatitis
     M K Aktar et al. Allergy 70 846-54 (2015)
    4) マスト細胞の分化に伴う機能制御 田中智之 生化学 第82巻 第11号 pp.1021-31 (2010)

    <遺伝子の特徴>
    COX2(Cyclooxygenase-2: シクロオキシゲナーゼ-2)
    炎症性エイコサノイドであるプロスタグランジンE2(Prostaglandin E2:PGE2)を産生する酵素。PGE2はEP3受容体を介して皮膚マスト細胞を活性化させ、ヒスタミン放出を介して炎症を惹起します。PGE2は強い血管拡張作用(血管透過性亢進)をもち赤斑(紫外線暴露後の皮膚の赤味など)の原因物質でもあります。
    EDN1(Endothelin-1: エンドセリン-1)
    表皮細胞から産生されるサイトカインで掻痒物質の一つ。 UVB暴露後に生じるTNFαなどが誘発する炎症は表皮細胞からEDN1を放出させ、これが皮膚に分布する神経線維を刺激することで難治性の痒みを誘発します。EDN1はケラチノサイトからのIL25の生産を促進させTh2型への免疫偏移を加速させます。EDN1とそのレセプターEDN1RAはAD患者の罹患部で過剰発現していることが知られています。
    PAR2(Protease-activated receptor-2: プロテアーゼ受容体)
    活性化したマスト細胞から分泌されるトリプターゼの受容体。このリガンド作用がTh2サイトカイン分泌による炎症と痒みを促進させます。PAR2はAD患者の皮膚で発現が亢進しています。角化細胞の成長・分化、フィラグリン発現を阻害してバリア機能を低下させます。フィラグリン低下はその代謝産物の減少による角層pHの上昇を伴います。
    SCF(Stem cell factor: 幹細胞増殖因子)
    紫外線などの刺激により表皮細胞から産生されるヒスタミン放出因子あるいは放出促進因子の一つ。アレルギーシグナルの初発に関わります。マスト細胞のc-kit受容体リガンドであるSCFは、同じマスト細胞のIgE受容体を活性化させてアレルギー反応を増強させます。

    試験濃度:COX2,EDN1: 3 μg/mL;PAR2,SCF: 15 μg/mL


    5.4 フィトカンナビノイド様作用(CBD様作用)~まとめ~

    春一番の「ふきの芽」ならではの機能

     
    「春には苦味を盛れ」。春にかけての各種体調の変化にはふきの芽の苦味成分が有効であることを先人たちは知っていました。

    四季の明瞭な日本の春は、急な気温の上昇、気温の寒暖差、生活環境の変化によるストレス、春特有の花粉等飛散物質の大量発生などにより一年の中でも肌に強いストレスがかかる季節でもあります。春から夏にかけては皮脂量が大きく増え、それが春特有のニキビなどの肌トラブルの原因にもなっています。

    フィトカンナビノイド様物質として

     
    人体のECSが発見されたのち約35年、フィトカンナビノイドと肌の健康が注目されています。「ふきの芽フィトカンナビノイド」に含まれる「ふきテルペン」が皮脂腺に働きかけることでフィトカンナビノイド様物質(CBD様物質)としてECS調節作用を発揮することが期待されます。その結果、皮脂分泌量の調節、抗炎症作用といった効果が発揮されるものと考えられます。ふき特有のポリフェノールであるフキノール酸やペタシフェノールは皮脂の酸化を防ぐ上で有効な成分です。
     

    6. メラニン生成を抑える

    ふきの芽フィトカンナビノイドは、B16メラノーマ細胞のメラニン生成関連遺伝子の発現を抑制しました(下図)。
     

     
    ECSのメラノジェネシスとの関係はまだ十分に解明されていません。CBDがメラニン産生を活性化したとの報告もあります。本原料「ふきの芽フィトカンナビノイド」にはフキノール酸などのポリフェノールも含めて、多様なフィトケミカルが含まれています。その結果、メラノジェネシス関連遺伝子(TYRとMC1R)の発現が抑制されたと考えられます。これにより、シミ・そばかすを防ぐ効果が期待できます。

    ・Cannabidiol upregulates melanogenesis through CB1 dependent pathway by activating p38 MAPK and p42/44 MAPK. YS Hwang et al. Chem Biol Interact. 273 107–114 (2017)

    <遺伝子の特徴>
    TYR(Tyrosinase: チロシナーゼ)
    メラニン産生に必須の酵素。紫外線などの影響で活性化し、色素細胞中でチロシンというアミノ酸から段階を経てメラニンになる際に作用します。シミなど色素沈着のある肌で活性化しています。
    MC1R(Melanocortin 1 receptor: メラノコルチン1受容体)
    色素細胞刺激ホルモンであるαMSH(α-Melanocyte-stimulating hormone: α-メラノサイト刺激ホルモン)の受容体。紫外線などの刺激により表皮細胞から過剰にαMSHが分泌され、色素細胞表面にあるMc1rと結合することでメラニン産生が誘導されます。メラニン産生が過剰に誘導されるとシミの原因となります。

    試験濃度:3, 30 μg/mL


     

    7. 皮脂化粧品市場とジェンダード・イノベーション

    7.1 皮脂化粧品市場

    多くの人が悩みを抱えている毛穴。毛穴ケアはアプローチ方法が多様なこともあり、新商品が多く展開されています。

    毛穴悩みの代表的な症状としては「つまり・黒ずみ」が挙げられますが、これはいずれも皮脂とその過酸化脂質が関係しています。そのためのケアとして「除去」と「皮脂抑制」があり、クレンジングや角層ケア(保湿・収れんなど)が一般的に有効です。

    カテゴリー 2020年 2021年*
    ホワイトニング  12.0%減  3.7%増
    アンチエイジング  10.4%減  3.5%増
    敏感肌ケア   2.0%減  5.6%増
    皮脂毛穴ケア  5.8%増  16.0%増 

     
    マスク生活が続くなか、毛穴・角質ケア、ニキビ、あるいは肌荒れ・敏感肌に対応した商品が続々と開発されています。これらの商品は消費者ニーズを捉えて拡大しています。

    皮脂ケアでもっとも活躍している成分がビタミンCですが、これは皮脂腺に対して細胞レベルで抑制的な効果を発揮します。しかし上述の解析結果のとおり、性差あるいは季節や年齢とともに変化する肌状態は様々で、皮脂不足の肌状態も多く見られます。そのため、近年ではECSを介して肌の皮脂量を適正にコントロールできるCBDが注目されています。

    本開発原料は、カンナビノイド様作用を発揮する新しい植物由来原料として幅広いニーズが期待できます。

    ※機能性化粧品の国内市場を調査 富士経済プレスリリース 第21020号


    7.2 「ジェンダード・イノベーション」発想のユニバーサルデザイン原料

    今回、皮脂・毛穴に関する年齢と性差解析および肌診断データの解析を行うことで、多様な肌状態とそれに必要なケアは異なることを確認しました。

    スキンケアにおけるジェンダード・イノベーション

     
    これまでは成人男性を基準としていたものに、新たに「性差」の観点を加えて特に女性特有の課題を解決するために研究開発(フェムテック)を進める考え方が「ジェンダード・イノベーション」です。化粧品業界においてはその逆で、成人女性を基準として開発されてきたものに、男性用化粧品が追随している状況です。

    肌パラメーターの性差分析についてはこれまで多くの比較検討がなされていますが、一部の結果を除いて一貫したデータは得られていません。性差が分かっている例として以下の情報があります。

    皮脂腺は性ホルモンの影響を強く受けるため、皮脂量や毛穴面積などは男性の方が高い
    男性の下まぶたでは皮膚の色素沈着と厚さが有意に高く、顔のしわが深く、顔のたるみが目立つ
    皮膚の弾力性は男女間で大きな差はない

    ・Male versus female skin: What dermatologists and cosmeticians should know. S Rahrovan et al. Int J Womens Dermatol. 4(3) 122–130 (2018).

    皮膚の生物学的な応答は男女間で共通項が多いのが実際のところですが、性ホルモンの違いは生物学的性差として肌に顕著な影響を与えます。

    一方外界と接している肌だからこそ、生物学的性差以外の因子も強く影響します。社会的・文化的性差がそれにあたります。

    女性では適切なUVケアを施すことにより男性よりもしわ・しみの進行が抑制されます。一方、UVカットコスメやメイクを落とすためのクレンジングにより肌荒れや敏感肌が生じがちです。男性は生物学的には皮膚が厚く元来コラーゲンも多いという特性をもち、女性よりも老化は遅いと一般にいわれています。しかし日焼け(UVダメージ)により光老化が促進したり、日々のシェービングにより肌荒れや乾燥肌が生じがちです。また男性は皮脂分泌が多く、UVダメージを受けてしまうことで肌酸化ストレスも亢進してしまいます。

    皮脂についてはとくに中高年以降明確な性差が存在し、分泌抑制と促進のバランスを整えるスキンケアが必要となります。それを細胞レベル、分子レベルで実現してくれるのがエンドカンナビノイドシステム(ECS)です。

    *2022年に政府が「女性活躍・男女共同参画の重点方針(女性版骨太の方針 2022)」の中でジェンダード・イノベーションに言及
    *本資料では生物学的性差を指して「女性」「男性」と記載

    ECS調節様作用ならではのユニバーサルデザイン:幅広い層の肌悩みに対応

     
    ECS調節機能は性差に関わらず「代謝のバランスを整える」ことが本質です。本原料「ふきの芽フィトカンナビノイド」は、女性と男性がそれぞれもつ固有の肌悩みに対して、1原料で適正にアプローチすることが期待できます。ECS調節様作用をもつ化粧品原料は、まさにジェンダード・イノベーション発想のユニバーサルデザイン原料です。

    ジェンダード・イノベーション発想のテクノロジー*(例)

    *ターゲットとなる肌トラブルとして
     
    ❏フェムテック(女性 × テクノロジー)
     エイジングテック(中・高年)
     ・加齢にともなう皮脂分泌過少(潤い低下)
     ・更年期の女性ホルモン低下による急激な肌老化(コラーゲン低下、セラミド低下など)
     ・同じく体質変化(加齢臭・頭皮臭・ベタツキ)
     ・UVカット/メイク落としのためのクレンジングによる肌荒れ、敏感肌、乾燥

     チャイルド・ユーステック(子供・若者)
     ・10歳から30代までの皮脂分泌過多(ニキビ、ベタツキ、毛穴、炎症)
     ・子供から20代までのそばかす

    ❏メンテック(男性 × テクノロジー)
     エイジングテック
     ・50歳過ぎまでつづく皮脂分泌過多(ベタツキ、テカリ、毛穴、頭皮、炎症、加齢臭)
     ・UVダメージの蓄積による光老化、肌酸化ストレスの亢進
     ・シェービングによる肌荒れ、乾燥

     チャイルド・ユーステック
     ・20代前半までの皮脂分泌過多(ニキビ、ベタツキ、テカリ、毛穴、炎症)
     ・子供から20代までのそばかす
     

    8. 秋田ふきの芽ならではの多彩なフィトケミカル

    8.1 春山菜の成分比較

    春山菜のエキスを同一条件下で調製・分析しました(下図)。

    ポリフェノール類としては、ふきの芽にはフキノール酸、ペタシフェノール、クロロゲン酸類、ケルセチン配糖体などが、よもぎにはクロロゲン酸類が豊富に含まれていました。一方セスキテルペン類としては、ふきの芽以外の春山菜からはほとんど検出(m/z100-420)されず、ふきの芽においてのみ特異的に検出されています。

    このことから、セスキテルペン類に関しては春一番(に顔を出す)のふきの芽に一番豊富に含まれると考えられます。
     


    8.2 秋田ふきの部位比較

    次に、ふきの芽(フキノトウ)とふき葉(成長したフキの葉)を比較しました(下図)。

    ふきの芽とふき葉にはポリフェノール類が共通して豊富に含まれています。一方、セスキテルペン類はふきの芽にとくに多く(S-ペタシン、フキノリドB、イソペタシンなど)、葉には主にフキノンと推定されるピークが検出されました。

    このようにセスキテルペンについては、成長したふきの葉には見られないふきの芽ならではの特徴が示されました。
     

     
    光合成を行う濃緑色の葉にはフキに限らず紫外線から自身を守るため、一般にポリフェノールが蓄積しています。一方、大地を割り春一番に顔を出したばかりのふきの芽はそもそも花芽(花蕾)です。葉のように見える組織は苞であり、光合成を行う葉緑体を蓄積する組織ではありません。にもかかわらずポリフェノールが豊富に含まれ、かつフキノール酸のような固有のポリフェノール成分を大量に含むのは、セスキテルペン類同様に草食動物に対して「苦味」で対抗しているためかもしれません。

    結果としてふきの芽は、数ある春山菜のなかでもポリフェノールとセスキテルペンの両物質群をバランスよく、且つトップレベルで含む特別な植物となっています。
     


    8.3 国内ふきの芽の産地比較

    最後に、秋田ふきの芽のフィトケミカルを分析し、他産地のふきの芽(品種不明)と比較しました(下図)。

    ふきの芽のセスキテルペン類は、エモフィラン骨格をもつペタシン系とフキナン骨格をもつフキノリド(バッケノリド)系に分類されます。秋田ふきの芽にはフキノリドも含まれていますが、ペタシン類がとくに多いという特徴が見られました。

    秋田ふきと産地N、産地Gと産地Aはそれぞれペタシン系とフキノリド系に類似した量的特徴が見られ、これは品種の系統によるものと推測されます。
     

     
    以上3つの分析結果をまとめると、秋田ふきの芽は
     ① セスキテルペン類の量が春山菜のなかで一番で、ポリフェノールも豊富
     ② 同じ秋田ふきでも成長したふき葉よりテルペン類が豊富
     ③ 他産地のふきの芽(品種不明)よりペタシン類が豊富
    であることが分かり、秋田ふきの芽はフィトケミカルの供給源として優秀であることが示されました。
     

    9.「ふき」に伝わる機能とフィトカンナビノイドとしての共通点

    1000年以上前からの日本人の身近な食べ物

     
    『出雲国 風土記』(733年):ふきについて記載されている最も古い文献
    『延喜式』(927年):身近で栽培できる園菜として栽培されていたことが記されている。
    『百姓伝記』(1681年)・『農業全書』(1697年):農法が詳しく記載され、盛んに栽培されていた。

    手軽に栽培できる野菜として当時は貴重な作物であり、ふきは遅くとも平安時代から栽培され食されていました。このように「ふき」は古代と現代を繋ぐ価値のある植物です。

    (参考)
    ・`日本における蕗の認識・実態 ―主に食文化の視点から― 関原成妙、品川 明 食文化研究 No.15 37-48 (2019)

    赤ん坊の各種皮膚病や癲癇の治療に

     
    胎毒という医学用語があります。これは赤ん坊が母体内で受けた毒が原因となって発症する各種病状を指します。胎毒の症状には皮膚病、癲癇(てんかん)、食欲不振などがあり、生後間もなく治療をしっかり行うことが重要とされてきました(胎毒下し)。胎毒が驚風 (脳膜炎)を引き起こすことで癲癇となるから、胎毒を治療できれば癲癇を防ぐことができるということです。この胎毒下しにふきの根を煎じた汁が使われ、赤ん坊に飲ませていました。近年まで産育習俗として日本各地で行われていたようです。

    CBDが注目を浴びるようになったきっかけは、重症の癲癇(てんかん)を患う少女の発作の回数をCBD摂取が大きく減少させたことが、2013年に全米で医療番組に取り上げられたことでした。また、CBDクリームがアトピー性皮膚炎や乾癬といった皮膚疾患にも有効とされています。

    このように、古よりの日本人の知恵と現代のCBD科学には共通点が存在します。人体のECSが発見される遥か前から、日本人はふきやその芽を食すことで解毒や抗炎症とったフィトカンナビノイド様作用の恩恵を受けてきたといえます。

    (参考)
    ・日野壽一 「胎毒下し」 助産婦雑誌3巻2号(1953)

    「ふき」といえば抗アレルギー作用:花粉症に有効

     
    「春の皿には苦味を盛れ」。
    冬の乾燥で弱った肌に春の息吹が追い打ちをかけます。春の息吹には植物の花粉が含まれ、多くの日本人にとってつらい季節でもあります。季節の変わり目で気温の上昇に伴い体表温も上がり、アトピー体質の人では痒みが増します。花粉症で大量に作られたIgE抗体はアトピー性皮膚炎の重症化にも関わります。これら春の体調のゆらぎに対して、ふきの芽を代表とする苦味植物を食べることが大切だと、先人たちは伝えています。

    フキのエキスには季節性アレルギー性鼻炎に効果があることが報告されています。一方、効果が見られなかったという報告も存在します。これには品種の違いや、有効成分の濃度の違いなどが影響していることが示唆されています。ペタシンで規格化されたフキエキスは臨床試験で効果があることが示されています。実際、アレルギー対策用として西洋フキを用いたサプリメントが多く販売されています。世界的には成長したフキの研究が一般的ですが、当社分析で示されたように、ふきの芽にはフキ以上の生理活性成分が含まれています。

    ・Randomised controlled trial of butterbur and cetirizine for treating seasonal allergic rhinitis
     A Schapowal. BMJ. 324 19 (2002)
    ・Effects of butterbur treatment in intermittent allergic rhinitis: a placebo-controlled evaluation
     RD. Gray et al. Annals of Allergy, Asthma & Immunology. 93 1 56-60 (2004)


     

    10. 秋田伝統の巨大な春山菜「秋田ふき」

    巨大に成長する秋田ふき

     
    フキ(蕗)はキク科フキ属の多年草で、数少ない日本原産の山野菜です。日本の北から南にかけて広く分布し、山野に自生する山蕗や野蕗などの野生種と栽培種などを含めると全国に200種以上あるといわれています。

    アキタブキ(秋田蕗、学名:Petasites japonicus subsp. giganteus)はフキの変種で、亜種名giganteusが示すとおり巨大に成長します。エゾブキ、オオブキとも呼ばれ、北海道足寄町で有名な巨大フキのラワンブキ(螺湾蕗)はアキタブキの仲間です。秋田フキは「あきた伝統野菜」に認定されています。

    江戸時代には、傘の代わりになるほど巨大なフキということで、国中に知られることとなりました。実際に、秋田フキを傘にした絵が描かれています。
     

    画像出典:歌川貞秀「秋田ふき之図」 国立国会図書館デジタルコレクション

     

    秋田フキのフキノトウ(ふきの芽)

     
    フキノトウはフキの若い花芽(花蕾)のことで、秋田県の県花になっています。東北の一部地域ではフキノトウのことを「バッケ」と呼びます。そのため、秋田県の研究者が発見した苦味成分セスキテルペンはバッケノリド、芳香成分はフキノンと命名されました。

    ・フキ属植物のセスキテルペン類、野村正幸ら、素材物性学雑誌 22(2009)

    秋田ではフキノトウを保存もきくフキ味噌(ばっけ味噌)として日常的に食べているそうです。フィトケミカルの豊富な秋田フキですが、繊維が固くて食べにくいこともあり、今では一般的な柔らかいフキ(フキノトウも)が食用とされているそうです。

    秋田フキの祖先は、樺太や北海道に自生していたオオフキだといわれています。アイヌ伝承の小人「コロポックル」は、アイヌ語で「フキの下に住む人」の意味です。フキノトウはアイヌ語でマカヨと呼ばれ、春の日常食の他、蛇に嚙まれたり蚊に刺されたときに薬用として塗っていたそうです。

    本原料には、地元の山菜取り名人が旬の時期に採取した秋田フキの花芽を使用しています。
     

    11. 原料情報

    原料情報
    原料名:ふきの芽フィトカンナビノイド
    製品英語名:Japanese Butterbur Bud Phytocannabinoid
    表示名称 :フキ芽エキス
    INCI:Petasites Japonicus Bud Extract
    自然由来指数:100%(水を含む)※ISO 16128規定の自然原料等の定義と計算方法に基づく

    安全性情報
    ・24時間閉塞パッチテスト:刺激性なし
    ・SIRC細胞を用いた眼刺激性試験:刺激性なし
    ・ROSアッセイによる光毒性試験:陰性

    SDGs

    4.7/8.9/9.4/9.b/11.a/12.8/12.a/12.b/17.6(6目標9ターゲット)

    ※本資料の著作権は出典が明記されているものを除き、原則、株式会社サティス製薬に帰属します。目的と方法を問わず、本資料の一部または全部について無断で複写、複製、引用、転載、翻訳、貸与等を行うことを禁止します。本資料は原料技術資料であり、本資料で紹介している表現は、各種法律に違反しないことを何ら保証するものではありません。