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天然系両親媒性物質を用いた乳化技術2016.09.13

水と油が分かれる理由

化粧品の多くのものには水成分と油成分が同時に使用されています。ご存知のように、通常の状態では水と油は混ざり合わず、両者はきれいな境界線(これを「界面」といいます)を形成して分離します。身近な例ではオイルドレッシングが挙げられます。使用前のドレッシングはきれいな2層に分離していますが、使用時に激しく振って両者を混合すると、きらきらと輝く液滴を確認することができるかと思います。このように、混ざり合わない液体の一方がもう片方の液体へと分散した状態のことを「エマルション」といいます。しかし、ドレッシングの例ではエマルション状態は長く続かず、静置しておくと次第に2層に分離していきます。これは、水と油の間に界面張力と呼ばれる、いわば反発力のような力が働いているためです。このような界面張力が存在するため、水と油はできるだけ接する表面積を小さくしようし、その結果比重との関係から上下の2層に分離してしまうのです。

水と油をつなげる立役者-界面活性剤

そこで登場するのが「乳化」と呼ばれる技術です。乳化とは、水と油から形成されるエマルションを分離しないようにする技術のことです。一般的な乳化には「界面活性剤」と呼ばれる物質が必要となります。界面活性剤は「乳化剤」や「両親媒性物質」などとも呼ばれていますが、これらの名称の違いは着目点が異なるだけで、本質的には同じものを指しています。つまり、

  • ・界面活性剤:水と油の界面張力を下げるという作用に着目
  • ・乳化剤:水と油を混ぜ合わせて乳白色の液体を作り出すという現象に着目
  • ・両親媒性物質:物質の構造に着目

と説明することができます。界面活性剤は水になじみやすい部分(親水基)と油になじみやすい部分(親油基)を有しており、水にも油にも混ざることのできる物質です。これが「両親媒性」と呼ばれるゆえんです。このような構造的特長により、界面活性剤は水と油の界面に配置され、両者を繋ぎ止めることでエマルション状態を保たせているのです。

一般的な界面活性剤とは?

現在化粧品で使用されている界面活性剤のほとんどのものが合成により作り出されたものです。人工がゆえに様々な乳化力のものが多種類生み出されており、安定した化粧品作りに大きく貢献しています。ところが、合成界面活性剤の多くのものにはポリオキシエチレンやポリエチレングリコールといった重合体(ポリマー)が使用されています。ポリマー自体の毒性は低いのですが、ポリマーの原料となるエチレンオキサイドやエチレングリコールといった単量体(モノマー) には強い毒性があり、これらモノマーが不純物として混入している可能性や、ポリマーの重合度が小さい場合は、ポリマー自体が刺激を引き起こしてしまうという問題があります。また、人工産物であるため、環境中に放出された場合に分解されにくいという問題もあります。

天然にもある界面活性剤

界面活性剤は人工的に作り出されるだけではなく、天然にも存在しています。天然界面活性剤を用いた乳化物質として代表的なものはマヨネーズです。マヨネーズは油と食酢、そして卵から作られており、卵が界面活性剤としての役割を果たしています。もう少し正確に述べると、卵の中に含まれているレシチンという物質が界面活性剤です。もちろん卵ですので食べても問題のない界面活性剤です。そのほかに、多くの植物に含まれているサポニンや甘草に含まれているグリチルリチン酸、微生物の代謝産物なども界面活性剤としての能力をもっています。

サティス製薬の技術

レシチンをはじめとする各種天然系界面活性剤による乳化技術について研究を行い、特にレシチンを用いた乳化では、一般的な人工界面活性剤を用いたものとは違った感触の乳化産物を得ることができ、採用していただいお客様からはご好評いただいております。また、微生物の代謝産物を利用した乳化についても安定した乳化産物を作り出すことに成功し、製品化に向けた研究を現在行っております。