INFORMATION
お知らせ和食の名脇役『紅たで』を主役にした国産化粧品原料を独自開発~メラノソームを酸性化し、シミのできにくい細胞環境に整える~2021.04.09
スキンケア化粧品の開発とOEM製造を行う株式会社サティス製薬(代表取締役:山崎智士、本社:埼玉県吉川市)は、「紅たで」のもつ特異なフラボノイド成分に着目し、美白の重要因子「メラノソーム酸性化」を実現する化粧品原料の開発に成功しました。現在のコロナ禍においては紅たでの需要も大きく減少しています。サティス製薬は美容素材としての紅たでの新しい価値を発信し、エシカル消費の推進で産地に貢献していきます。
1.日本の素材と文化を独自技術で化粧品原料へ
1-1)紅たでは和食文化の名脇役
ユネスコ無形文化遺産にも登録された「和食」は単なる料理の一ジャンルで語れるものではなく、日本人が古来より受け継いできた「自然の尊重」や「健康長寿への願い」の精神に立脚した大切な文化です。これを体現したものに刺身に添えられる様々な植物があります。その一つ「紅たで」には、鮮やかな彩りに加えて生ものの生臭さを消したり殺菌力を発揮したりと、健康に資する知恵が込められています。この小さな紅たでには環境ストレスと戦うための植物本来の大きな力が備わっています。
1-2)コロナ禍により需要が激減している「紅たで」を化粧品事業を通して応援
本原料には、日本一の産地である福岡県朝倉市産の紅たでを使用しています。紅たでは日本原産の伝統野菜ですが、家庭での利用は一般化していません。そのため、昨年からのコロナ禍における飲食店需要の低下により、紅たでは出荷量が大きく減少しており他の産地も含めて厳しい状況に置かれています。
1-3)紅たでのもつ知られざる力:細胞内酸性化能
紅たでは日本各地の休耕田や川原に自生するヤナギタデの子葉で、湿生植物に分類されます。湿生植物の一部にはフラボノイド硫酸といわれる酸性ポリフェノール成分が特異的に存在し、これはヤナギタデで初めて発見されました。フラボノイド硫酸は植物細胞内の酸性化に関わると言われていますが、肌への有効性はほとんど解明されていません。我々は、紅たでにもフラボノイド硫酸が豊富に含まれていることを発見しており、この紅たでのもつ細胞内酸性化能を肌のケアに活かそうと考えました。
2.紅たで由来化粧品原料が肌のメラノソームを酸性化してメラニン生成抑制
メラノソームは皮膚でシミの元になるメラニン色素を作り出す唯一の細胞小器官です。このメラノソーム内でメラニンを作り出す重要酵素がチロシナーゼです。チロシナーゼはメラノソーム内のpH環境が中性に近づくと活性が大きく増大し、逆に酸性化すると活性が低下してメラニン生成が抑制されます(図1)。このことから、メラノソームのpH環境がメラニン生成を制御する最重要因子と考えられています。
我々は、紅たでのもつ細胞内酸性化能を引き出すことで、「メラノソームを酸性化してシミのできにくい細胞環境に整える」ことが期待できる化粧品原料『紅たでフラボノイドS』の開発に成功しました。
今後の展望
日本の素材・文化・技術から生み出された本原料を化粧品OEM事業を通じて世界に発信することで、美容素材としての新しい価値が付与された紅たでの需要が拡大していくことを期待しています。今後も日本の植物を独自に活用し、産地の活性化にもつながる原料開発を進め、サスティナブルな化粧品産業に貢献していきます。
--技術情報--
◆紅たでフラボノイドSはメラノソームを酸性化
メラノソームに存在するチロシナーゼに応答して赤色に染色される試薬を使うと、チロシナーゼの場所が赤色として確認できます(図2A)。また、紅たでフラボノイドS添加の有無で赤色の強度に違いは見られなかったことから、紅たでフラボノイドSは細胞の健全性には影響を与えないものと考えられます。次に、細胞内が酸性化すると緑色に染色される試薬を使うと、紅たでフラボノイドS添加によりメラノソーム内のチロシナーゼの存在場所が酸性を示す緑色に染まっていることが分かります(図2B)。
このことから紅たでフラボノイドSには、メラノソームを酸性化することでチロシナーゼ活性を抑制する効果が期待できます。
◆紅たでフラボノイドSはメラニン生成を抑制
メラニンを多く生成するように刺激を与えた細胞に紅たでフラボノイドSを添加すると、刺激を与えなかった細胞と同じレベルまでメラニン生成量が低下することが分かりました(図3)。
以上から紅たでフラボノイドSは、メラノソームを酸性化することでチロシナーゼ活性を抑制し、メラニン生成を抑制すると考えられます。シミ・そばかすの原因となるメラニン生成の抑制には様々なアプローチがありますが、なかでもメラノソーム酸性化は細胞環境そのものをシミのできにくい状態に導くため、美白の土台として期待できます。